江戸建物探訪

日本科学未来館

 秋の発行となる上品倶楽部22号の江戸建物探訪は、「秋のお月見」にちなみ、天体観測というキーワードでプラネタリウムのある場所に・・・。そんな計画を編集部内で話していたところ、お台場の「日本科学未来館」には、ちょっと変わったプラネタリウムの「ドームシアター」というものがあるらしい。そんなことから、今回の取材の場所が決定しました。
 様々な楽しい行楽スポットが存在するお台場。「日本科学未来館」もそんなお台場の中に存在します。
 「科学」と聞くと、その分野に明るくない方は、少し堅苦しいイメージを持たれてしまうかも知れません。白衣を着た専門家が難しい顔をして研究をしているところを何となく思い浮かべてしまう人も多いのではないでしょうか。
 しかし、「日本科学未来館」は、そんなイメージを根底から変えてくれる、想像以上に楽しい施設です。自分の目で見て、体で触って、頭で考えて、心で感じる科学。子供から大人まで、科学の知識がなくても、豊かな時間を過ごせる工夫が、施設の随所に施されています。最先端の技術のロボットや、宇宙開発の歴史、人の命を助ける医療に繋がる科学など、人々の生活、わたしたちの未来にどのように科学が関わっていくのか、考え、学びながら、楽しむことができます。
 そして、ただ来館者が受動的に展示を受け止めるだけではなく、科学に対する疑問や、研究者への希望など、科学について能動的にコミュニケートできる貴重な場所でもあります。
 今回は、日本科学未来館広報の曽山さんにご案内いただきながら、お話を伺いました。

 

常設展「ニュートリノの観測」

常設展「100億人でサバイバル」

「科学」を語り合う場所
 2001年に開館した「日本科学未来館」は、現在研究されている先端の科学を紹介しています。それだけではなく、科学技術を「人類の知恵」のひとつ、つまり「文化」のひとつとしてとらえ、語り合う場になればという考えの元に運営されています。
 一般の人々と専門家が、ともに科学技術の役割や可能性を考え、一緒に未来の社会を描けるように、すべての常設展示を第一線の研究者・技術者とともに作り上げ、表現しています。また、文化としての科学技術をよりよく理解してもらうために、多くの外部組織と協力し連携しながら、さまざまな手法を用いた企画展を開催しています。
 そして、来館者の方々と「科学を語り合う」という大切な役割をするのが、科学コミュニケーターたちです。役割社会の多様な人々と科学技術をつなげ、未来の社会を共に作り上げるために活動しています。ボランティアも200名ほどが登録しています。
 科学者や技術者と一般の方々をつなげるのが科学コミュニケーターの役割です。来館者の方は、科学に対する疑問や研究者への期待の気持ちは、この科学コミュニケーターに伝えることができます。一般の方の疑問や期待を研究者に伝えることで、科学と社会の間に双方向のコミュニケーションを生みだすことを目的としています。科学コミュニケーターが、展示フロアでの解説や実演をし、また一般の人たちと一緒に考えながら話を深め、みんなが新たな気づきを得る。これが未来館スタイルです。

常設展「こちら、国際宇宙ステーション」

美しい地球の姿を共有する「ジオ・コスモス」
 日本科学未来館の館長をつとめるのは、宇宙飛行士の毛利衛さんです。毛利館長の「宇宙から見た美しい地球を共有したい」という願いから生まれたのが、館内に入ってすぐに目に入る、シンボル展示の「ジオ・コスモス」。大きな吹き抜け空間に浮かぶ、地球ディスプレイです。こちらは、有機ELパネル約一万枚をつなぎ合わせて作られたディスプレイで、気象衛星から取り込んだ実際の雲の様子が映し出されています。
 ジオ・コスモスの真下には、ソファーが置かれており、美しい地球を寝転んで眺めることも出来ます。しばらく見ていると、雲が流れていく様子がわかり、台風が発生して日本に近づいてくるのが見えたりと、まるで生き物のように常に変化をする地球の姿に、時を忘れて魅了されてしまいます。

ドームシアターガイア 立体視プラネタリウム作品「バースデイ」

まるで宇宙に浮いている感覚「ドームシアターガイア」
  今回編集部の一番の目的でもあった、「ドームシアターガイア」。こちらは、全天周・超高精細立体視映像システム “Atmos”やプラネタリウム投影機 “MEGASTAR-II cosmos”で、これまで以上にリアリティのある星空を映し出すことができるシアターです。壮大なスケールのプラネタリウムを楽しむことができるプログラム「バースデイ ~宇宙とわたしをつなぐもの~」は必見。

常設展「アナグラのうた」

「世界をさぐる」、「未来をつくる」「地球とつながる」常設展
   常設展は、「世界をさぐる」「未来をつくる」「地球とつながる」というテーマの3つのゾーンで構成されています。すべて展示が、第一線で活躍する科学者・技術者の監修にもとづいて制作されています。

 「世界をさぐる」は、宇宙、地球環境、そしてそのなかで育まれる生命など、私たちをとりまく「世界」のしくみを、さまざまなスケールでさぐるゾーン。
 開館の翌年、2002年からある展示「ニュートリノの観測」では、岐阜県・神岡の地下1000mにあるニュートリノを観測する装置「スーパーカミオカンデ」の10分の1の模型を見ることができます。模型の中に入ると、ニュートリノをとらえるセンサーが壁や床にずらりと並び、時折青く発光する光に包まれて幻想的な体験をしているように感じます。この展示を総合監修された梶田隆章さんは、2015年にノーベル物理学賞を受賞されました。
 「こちら、宇宙ステーション」では、約400km上空に建設された国際宇宙ステーションを紹介。宇宙居住棟の模型の中に入り、宇宙での暮らしやそこで行われている研究成果を見ることができます。この展示は、館長の毛利衛さん自らが宇宙飛行士の経験を一般の方に伝えるため、総合監修されています。
 また、私たちの生命に関わる医療の分野の科学も展示を通じて知ることができます。「ともに進める医療」では、画像診断技術の発展や、一人ひとりの体質にあった患者に負担の少ない治療法、病気を防ぐ医療などを紹介し、医療の将来像を考えることができる展示です。「細胞たち研究開発中」は、iPS細胞など現在進行形の研究や、生命の基本単位である細胞の原理やしくみを幅広く知り、新しい「細胞」とのつきあい方について考えることができます。

常設展「インターネット物理モデル」

常設展「アンドロイド ― 人間って、なんだ?」

 「未来をつくる」ゾーンでは、未来を変えていく革新的な技術が紹介されます。ロボット、アンドロイド、インターネット物理モデル、その他、理想の地球を実現していくために必要な科学技術やライフスタイルを考えていくことができる展示があります。

 「地球とつながる」は、最先端の技術とデータを使いながら、地球上のあらゆる生命と環境と自分との「つながり」を感じるゾーンです。ジオ・コスモスもそのひとつ。国内外の科学者や研究機関から集めたさまざまな地球観測データへ自由にアクセスできる、インタラクティブボード「ジオ・スコープ」、世界の国々や地域に関する多様な情報をもとに、オリジナルの世界地図を描くことができるオンラインサービス「ジオ・パレット」など、設置された端末を使用しながら、地球環境と自分とのつながりを感じ、新たな「知」を深めることができます。
 また、このツールを使い、「つながり」を軸とした新しい地球観を描くことによって、地球を理解するコンテンツの受発信拠点となることを目指す「つながりプロジェクト」にも注目です。

常設展「ジオ・スコープ」

常設展「ロボットとくらし」

 他にも、日本科学未来館には注目すべき数々のアクティビティがあります。中でも、人気なのは、ヒューマノイドロボットASIMOの実演。一日に数回行われるこのイベントは、毎回多くの来館者が楽しみにしているもの。実演を行うASIMOは、科学コミュニケーターの一員でもあり、初めて未来館にやってきたときには入社式が行われたのだそうです。来館者にもスタッフからも愛されるASIMOの姿は、近い未来、私たちの生活の中に今よりももっとロボットが密接な関わりを持ち始めたときの、理想すべきひとつの形のように感じました。


 

企画展のご案内
マンモス展 – その生命は蘇るのか –
2019年6月7日(金)-11月4日(月・休)
「愛・地球博」で700万人が熱狂した「ユカギルマンモス」をはじめ、近年ロシアの永久凍土から発掘された世界初公開を含む貴重な冷凍標本を展示。また、「マンモス復活プロジェクト」を通じて生命科学の未来を紡ぐ、マンモスの物語をご覧いただきます。

企画展特設サイト: www.mammothten.jp

 
 


日本科学未来館
所在地: 〒135-0064 東京都江東区青海2-3-6
アクセス:新交通ゆりかもめ「東京国際クルーズターミナル駅(旧船の科学館駅)」下車徒歩約5分
「テレコムセンター駅」下車、徒歩約4分
東京臨海高速鉄道りんかい線 「東京テレポート駅」下車、徒歩約15分

営業時間: 10:00~17:00(入館券の販売は閉館30分前まで)
休館日: 火曜日(火曜日が祝日の場合は開館)、年末年始(12月28日~1月1日)
※施設保守のため臨時で休館日を設ける場合があります
※春・夏・冬休み期間等は火曜日も開館する場合があります
連絡先: TEL 03-3570-9151(代表)
WEBサイト: www.miraikan.jst.go.jp/

 

 

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