COLUMN連載コラム

上品人生劇場 有限会社 佐野造船所 佐野ご兄弟

佐野ご兄弟と造船所風景 佐野ご兄弟と造船所風景 バックは製造中の船舶

ご兄弟のその造船所は、深川潮見の海の傍に位置する。そこで、木造船が製作されているのだ。もちろん、すべて手作り。海の傍の理由は作られた船を停泊させるためだ。 江戸時代天保の後の弘化時代、房総白浜が発祥らしい。1世紀半を超える船造りの伝統を今に受け継ぐ、御年62歳63歳の年子のご兄弟は9代目。お二人は深川古石場親水公園がまだ運河だったころ造船所のあるご自宅で育ち(今の牡丹町)、20年前にここ潮見に越されてきた。小さい頃から仕事場が遊び場、中学生時には船の製作道具もその使い方を体得されていたらしい。まさに船造りが幼い子供にして生活の一部だったのだ。 そんなお二人の船造りの信条は「かっこいいものをつくる」こと。そのこだわりが、今に受け継がれる伝統だ。機能は当たり前、まずは見た目。そしてデザインから素材、見えないところの細部に至るまで、細心の注意とこだわりの境地で丹念に造り上げること。 その話を聞いた瞬間、この造船所が巨大なアトリエ、工房に見えた。クリエイティブワークの空間をイメージしたからだ。そんな佐野ご兄弟が造り上げる船舶の評価は、「佐野の船は、形(なり)がいい。」と。最高の賛辞。

これが「江戸の粋」ってもの。江戸前船。佐野ブランドってとこか。クラフトマンシップ=モノつくりの魂、職人気質そのものだ。 写真で分かるように、お二人はその容姿もかっこいい。(お兄様の方は坂本龍一にそっくり)ダンディズムと上品さを兼ね備え、にこにこと笑い ながらお話しされるその物腰はとても柔らかい。これぞ生粋の江戸っ子。 日本を代表する某大手自動車メーカーも、佐野ご兄弟に熱い視線を注ぐ。 「世界の佐野兄弟、佐野造船所と言われる日も近いですね。」と、そんな話を投げかけると、「自分たちの作っているモノには自信をもっているが、そういうのは少し違和感がある、我々はあくまで地味に謙虚にいい仕事をしたいと思っているだけよ。」と。これぞ、ご兄弟の人生観、人生哲学。なんとも粋な生き方だ。 造船所からは、2020年の東京オリンピックの水泳競技場となる場所が目の前に広がる。その日に向けて、東京はどんどん変化する。が、変化の様を目の前で見ながらも、ご兄弟の日々の船造りの思いや仕事への姿勢は全く変化することなく、2020年を迎えられることと思う。

vol05_column_img02 (左)ご兄弟が育った深川古石場の造船所風景(イラスト)
(右)造船所から見る、2020年オリンピック会場

(有)佐野造船所 江東区潮見2-9-16 TEL 03-5683-1795

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