ネクロポリス(上・下)/恩田陸

こみちの本棚 22冊目

大切な人との別れを経験したことのある人なら、誰もが”会えないことの寂しさ”を感じたことがあると思います。
長い闘病の末の覚悟を決めた別れ。ある日突然引き裂かれたように訪れる別れ。
生死という決定的な事実の異なりで、離れてしまう人と人。
残された人が、もしも何か伝えたかったことがあるのならば、どうしても会ってもう一度話したい、という願いを持つと思います。

この物語では、アナザー・ヒルという架空の場所が舞台。
そこでは亡くなった人が、実体を持った「お客さん」として現れます。
人々はその不思議な現象が起こる特殊な土地に、親族一同舟に乗り込み、半ばお祭り騒ぎで訪れます。
見慣れぬ人から見ると不謹慎とも捉えられるその様子は、現地に暮らす人たちの中では当たり前の光景。どことなく、メキシコの死者の祭りを彷彿とさせますが、私たちから身近なのはお盆に親戚一同が集まってわいわいと楽しそうにしている場面の方かもしれません。

しっとりとした感動的な肉親の再会シーン・・・、になるかと思いきや、巷を騒がせていた通り魔事件の犯人が紛れ込んでいるらしいという物騒な展開から、息もつかせぬミステリーに。瞬く間にストーリーに引き込まれしまい、上下巻のボリュームを感じさせないほど、あっという間に読了してしまいました。

しかし、不思議な土地アナザー・ヒルの舞台設定もさることながら、登場人物がみんな魅力的。
この人は普段の生活はどうしているのだろう、この人はこれまでの人生どんな経験をしたのだろう、と人物像からさらなる想像が広がり、自分の頭のなかで勝手にスピンオフ作品が出来上がってしまいそうでした。それもこれも、私がストーリーに引き込まれてしまった証拠かもしれません。

ネクロポリス(上・下)
恩田陸
朝日文庫

(文:野原こみち)