私の本棚からvol.28

平行植物 レオ・レオニ

平行植物
レオ・レオニ
宮本淳 訳
工作舎

 

 

この本と出会ったのは25年ほど前でしょうか。当時、私は上京してまだ間もない頃、まだ学生で懐事情もあまりよくなく、本屋で気になる本を見つけても、自分の中で設定してる予算をこえていて、購入するのをためらう、ということがたびたびありました。古本屋をめぐって、運良く出会えればいいのですが、運が良ければの話・・・。
この本が置かれていた下北沢の本屋、いまだに店のどのあたりの棚のどの位置に置かれていたのかも覚えているほど。はじめて見つけた時は、教科書にのるほど有名な絵本「スイミー」の作者がこんな謎だらけの難しそうな本を書いているのかと思った記憶があります。「平行植物」という耳馴染みのない言葉がタイトルになっているのも気になりますが、パラパラをめくると、冒頭にはニョロニョロうねうねとした不可思議な見たことのない植物の絵。学名のようなものが羅列した一覧表、そして、斜め読みしただけでは到底理解できそうにない学術論文のような文体・・・。なんだかよくわからない。よくわからないのに、すごく心惹かれている気がする。
しかし、どうしても手に入れなければ!とそのときの私が思うための決定打がなかったのか、なんとなくずっと気になり続けている本として記憶に残り続け、見つけるたびになぜか買わないということを繰り返し繰り返し、実際に私の本棚にこの本の新装版を置くまで、なんと20年ほどかかりました。
この「平行植物」とは、絵本作家レオ・レオーニの想像力が産んだ架空の植物。空想の中から生まれた60数種ほどの植物について、発見史、進化過程の謎など、まことしやかに語られます。空想上の植物についてかかれているのに、とてつもなく奥行きがあるのです。そして、この本は生物系三大奇書とも呼ばれているらしく、なるほど私がずっと忘れずに気にしていたのもその奇抜なにおいを感じ取っていたからなのかも知れないと思うのでした。

(文・野原こみち)

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