働きたくないイタチと言葉がわかるロボット
川添 愛 著 花松あゆみ 絵
朝日出版社
子供の頃には、人工知能という言葉は映画やSF小説の中に登場するロボットとしか結びつかない単語で、自分のまわりのリアルな世界の中には探そうと思ってもなかなか結びつくものが見つからないものでした。しかし、私が子供から大人に年を重ねる間、私たち現代人を取り巻く環境も変化をし続け、今やごく身近なところに人工知能、いわゆるAIが存在するようになりました。
何年か前に、人工知能VS人間のプロの最後の砦と言われていた囲碁界で、ついに人工知能が勝利したと話題になりました。
人工知能が搭載されて、性能が良い生活家電を選べるようになったり、そうかと思うと、数年後にはAIが人間の多くの仕事を奪うとの予測が取り沙汰されたりと、便利さと、その代償ともいえるちょっとした怖さとが混ぜこぜになり、人工知能のことを考えるとなんだか複雑な気持ちになるのはきっと私だけではないはず。
しかしながら、今私が一番身近に感じているAIの多くは、結構かわいらしいとも思える間違いや勘違いをよくします。その多くが、「言葉」にまつわるもの。例えば、話しかけたつもりはないのにスマートスピーカーのAIがちんぷんかんぷんなことを突然喋り出したり、テレビに搭載されたAIが話しかけたこととはまったく違う言葉を読み取っていたり。あれ?人間の言葉をロボットが正しく聞き取ることって実はかなり難しいんじゃ・・・とそんなことを思っていた頃に、こんな本に出会いました。
この本では、タイトルにあるように「働きたくないイタチ」たちが、自分たちのかわりに面倒なことを一手に引き受けてくれる「なんでもわかってなんでも出来るロボット」を作ろうとする物語です。登場するのは、ものぐさなイタチたちから始まり、フクロウや魚やアリたちで、イソップ童話のような雰囲気で物語が進んでいくのですが、人工知能を開発しようとしたときに一体どんなことが必要になるのか、どんなことは簡単にできて、逆にどんなことが難しいのかということが、わかりやすく解説されています。順番に読んでいくと、開発に携わる面から人工知能に人間の言葉を理解させるということがどれだけ難解なことなのか、ということも朧げながらもわかってきました。人工知能と今よりもさらに密接に付き合うと想像される未来に備えて、一読しておいて損はない一冊だと思います。
(文・野原こみち)