小宇宙

早坂 誠|2018年12月23日


アクアリウムという言葉の中にはいろいろな姿の水槽がある。
たとえば金魚すくいで掬った金魚。原種に近く和金という品種であるが、私たち業界人の呼び名は
「小赤」とかいてコアカと呼ぶ。実はこのコアカという言葉。和金の大きさによって呼び名も変わる。
生産地によって違いはあるはずだが、私の中では小赤より少し大きいものを「上小赤」ジョウコアカと呼び
そのさらに上のサイズは「別下」ベツシタと呼ぶ。由来はよくわからないが、
一般の方を前に言うと何かプロっぽさがでて良い。
更にその上が「姉金」アネキン。そして「和金」ワキンにたどり着く。
 姉金はサイズで大姉と呼ばれたり、和金に至っても
小和金から中和金、大和金があるようだ。
スズキやブリなどの出世魚同様、古くから人との関わり合いが深く
身近な魚の一部にはサイズでの呼び名を変えることで、取引がスムーズにいくのだろう。

その身近な和金をたまたま掬ったおかげで、アクアリウムをはじめるきっかけとなる。
そこから熱帯魚~さらには水草レイアウトやら海水魚やら
大型魚へと進むことで、すっかり家に溶け込むという流れができていた時代もなんだか昔の事に思える。
最近の家庭事情。部屋でのスペースが取れないという言葉。時間が無くて管理できないという声。
趣味の多様化と、だれでも気軽に簡単に実行できる趣味へと時代は流れる中で、
毎日少しでも手を加えることが必要であり、なおかつ、
経験がものを言うこともあり、失敗すると水槽が崩壊する。
そこまでして管理したくない人がいる中で、これほど面白い趣味はないという人もいる。
ガラスを隔てた全く別世界を作り上げ、魚が泳ぐ、水草が茂る。

人が管理できる生態系の循環。やはりアクアリウムはなかなか捨てがたい。
いろいろな思いを持ちながら、小さなグラスの中で創り上げた水草が茂る小宇宙。
創り上げた瞬間が完成ではない。ここから、時間の経過で変わる水景が面白い。
そんな思いを込めて、ご依頼者へと旅立つ流木とグラスの一つである。

writer ライター
早坂 誠
「水辺の動植物」の販売・管理・展示を行う
有限会社エイチツー 代表
ビオトープ計画・施工管理士
愛玩動物飼養管理士
観賞魚飼育管理士
著書「水草水槽のススメ」
関心事:音楽と生きもの。自家製梅干し。サンマの塩焼き。