流れ着く行く先

早坂 誠|2018年11月24日

水槽内に景観を創るときは自然界に存在するものを使用することは現在まで当たり前
のように行われてきた。天然素材の石・岩・木である。

その天然素材の配置構図によって、無の空間から水生生物が永続的に住める空間を作
り上げることと同時に、美的な空間も作り上げることが、

世界的に見ても一つのホビーとして確立している。

私が深くこの仕事に就くきっかけを与えてくれた書籍がある。=理想的な水槽・淡水
水槽の設備と世話の入門=

という本であるが、これは一般の書店には並んでない。何せ裏表紙かめくってみても
出版元はもとより、版の年月日も住所も何もかも

空白なのだから。もちろんバーコードも無い。

ドイツの観賞魚メーカーであるDuplaの元経営者であったkaspar Horst と 
Horst E.kipper の著であり、その日本法人であった、デュプラジャパンが翻訳し
出版した書籍である。私が初めて手に取ったのは20年以上も前になる。
(しかし現在でも内容に関して古いことはほとんどない。
強いて言うなら、蛍光灯やメタルハライドランプという

光源からLEDに変化したことぐらいなものである。
出版した時には家庭用LED照明の存在すら疑わしい時代であり、
逆に言うならそれだけ完璧な書籍だったことを物語ってる)

その書籍にある一枚の写真に対してのキャプションが初めて読んだ時の
鮮烈な思いは今でも記憶に新しい。「アメリカ人愛好家が所有する明らかに
インチキな水槽」・・・・

今同じような書籍が出たらこのような言葉は使えるのだろうかと心配になるその水槽。
“瀬戸物”で作られた橋ときつめの赤色と透けた緑のプラスチックでできている
人工水草。後方にエアレーションを行い(いわゆる“ブクブク”)

で管理されている。昔の日本でも当たり前のように
玄関などに飾られていた水槽を思い出す。しかしこれでも金魚は育つものだ。
良し悪しも・満足できるか出来ないかも、その人の感覚と価値観である。
美しい水槽を創り上げるときに楽しいことだけで完成、維持ができれば幸せ。

一旦苦悩を味わうと、それが意外に尾を引くこともある、
しかも景観というのはいつ完成なのかは作り手が決める。
一瞬のスキで崩壊することもある。

自由を手に入れ優雅に泳ぐ数センチの魚の幸せを願って、
閉鎖されたグラスに向かって汗をかいて創り上げる・・・・
色々と面白い職業だなと実感することも多い。

そんなことをこの流木の写真を眺めたときにふと感じた。千葉の海。

売れるかもと思い。持ち上げを試みたらその先に見える
小さな流木とつながっているようで、ピクリともしなかった。
やはり苦労しないとお金は入ってこないらしい・・・

writer ライター
早坂 誠
「水辺の動植物」の販売・管理・展示を行う
有限会社エイチツー 代表
ビオトープ計画・施工管理士
愛玩動物飼養管理士
観賞魚飼育管理士
著書「水草水槽のススメ」
関心事:音楽と生きもの。自家製梅干し。サンマの塩焼き。