コビトヒメビシ

早坂 誠|2026年3月21日

日本の浮葉植物の一つに「ヒシ」という植物がある。
私は20数年前、霞ヶ浦水系へ釣りに行くたびに
この植物を目にしていた思い出がある。

夏のコンクリートの照り返しの中でルアーを投げる。
その水面には、大きく浮葉を広げたヒシがぽつりぽつりと点在していた。
今振り返ると、どこか懐かしく、素敵な情景であったと感じる。

ヒシの学名はカナ読みで「トラッパ」といい、
どこかカニを思わせるような響きである。
日本には変種などを含め5種類以上が存在するとされ、
一般的なヒシは トラッパジャポニカTrapa japonica、
オニビシはトラッパナタンス Trapa natans と呼ばれる。

私がよく見ていたものは霞ヶ浦水系の分布域から考えると
Trapa japonica である可能性が高いが、
浮葉のみでの同定は難しいため、
まとめて「ヒシ」と呼ぶ方が分かりやすいだろう。

葉よりも大きな特徴は、鋭いトゲをもつ果実である。
うっかり素足で踏めば、非常に痛い思いをするに違いない。

なお、忍者が敵の足止めに用いたとされる「撒菱」は、
このヒシの果実の形によく似ている。
鉄製のものが普及する以前には、
自然のヒシの実が利用されていたのではないか、
という説もある。

写真は、そんなヒシと葉の形状がよく似ている「コビトヒメビシ」である。
南米原産の水草で、学名は ルドウィジア セデオイデスLudwigia sedioides。
科レベルで異なる植物であり、形が似ていてもいわば“他人同士”の関係である。

浮葉を水中に沈めると、水面へ戻ろうとする成長の速さは尋常ではなく、
その勢いには毎回驚かされる。

writer ライター

早坂 誠

早坂 誠

「水辺の動植物」の販売・管理・展示を行う
有限会社エイチツー 代表
ビオトープ計画・施工管理士
愛玩動物飼養管理士
観賞魚飼育管理士
著書「水草水槽のススメ」
関心事:音楽と生きもの。自家製梅干し。サンマの塩焼き。
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早坂 誠
「水辺の動植物」の販売・管理・展示を行う
有限会社エイチツー 代表
ビオトープ計画・施工管理士
愛玩動物飼養管理士
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