映像制作を生業とするものとして、常に“入り口”や“外側”にいる人の目線を意識している。
自分自身が客観を意識することもあれば、息子などの感じ方を大切にしたりする。
釣りという趣味は“魚を釣る”ことに没頭するあまり、現場で見ている視野が狭くなりがちだ。
しかし側から見ると、恐ろしいほど美しい大自然の中に身を委ねている。
私は撮影者であり釣り人。
普通の釣り人と比べると“他人”の釣りをとてつもなく多く見ている。
そして、釣り人の周りの景色の美しさを活かした描写を切り取ることが仕事だ。
道具の説明や釣り方の説明などではなく、
“入り口”や“外側”の人にはそのような映像が結果として最も釣りの魅力を伝えるものとなる。
どちらが良いということではない、そのギャップこそが価値の多様性。
広大な自然の中で目の前に没頭することが釣りの魅力であり、美しさである。
例えば船での釣り。
港から船が出る時、釣りの“中の人”たちは、そそくさと釣りの準備を始め、その目線は手元の餌や仕掛けばかり。
一方で初めての人などは普段は見ることができない船からの景色に感動すら覚える。
浦安であればディズニーランドと朝陽、
横浜であれば横浜の街と京浜工業地帯、駿河湾であれば朝日を浴びる富士山。
いずれも素晴らしい光景で、釣り人だけが見られる特権だ。
釣果にワクワクする人たちが乗った船が沖に向かっていく、
それを別の船から見ると素晴らしい客観の世界となる。
先日、山梨県の山中湖に撮影に向かった。
ワカサギ釣りなのであるが、絶不調のタイミングに当たってしまった。
しかし天気は最高。風もなく水面はまるで鏡のよう。
ドーム船での釣りだったのであるがトイレに立ったその時、目の間に素敵な景色が広がっていた。
沖から見る“逆さ富士“。特権を味合わせてもらった。
writer ライター

岡野伸行
西中国山地の麓で育ち、魚釣りが日常にある幼少期を過ごす。
大学では水産学を学び、魚が日常にある生活を送る。
大学卒業後は釣り番組の制作会社で、釣り人が日常にいる日々を過ごす。
2023年に独立し、H.I.T. FILMSの屋号で活動開始。
商業的ではなく作家性のある釣りの映像作品を制作。
釣りを人生で一周し、現在は冒険的なフライフィッシングを好み、
釣り旅のことばかりを考える毎日を送る。
H.I.T. FILMS
https:/hitifilms.jp