魚釣りは、有史以前から人類が行なってきたもの。
「服を着る」「火を使う」「住居を作る」などなど、人類の生活様式における転換点を歴史の授業などで学ぶが、
私にとって「釣り」もこれらと同じくらい大きな転換点であると思っている。
例えば、釣り道具を売ることを生業としている所謂「釣り業界」がなくなったとしても、
釣りと言う行動、文化は絶対に残り続けると言い切れる。
それほど「釣り」は人類にとって普遍的な何かを持っているものだと考えている。
釣りの目的について考えてみると「食料調達」が目的であったことは容易に想像できる。
古代の魚資源は今とは比べものにならないほど豊かで
、原始的な道具であっても現代人が想像するよりはるかに容易く魚が釣れたはず。
そして食料調達の目的とは言え、「楽しさ」も感じていたはずだ。
現代の釣りにおいてその目的や楽しみは、実に多様性を持って存在している。
無論「食料調達」は現代においてもこの目的がマジョリティであるが、
キャッチ&リリース(以下C&R)と言うスタイルも存在する。
釣った魚を再び逃がしてあげることを指すのであるが、
C&Rでは食料調達の意味合いは希薄であり、魚を釣る事そのものを「楽しむ」のが目的である。
釣りをしない人に、虐待ではないのか?と聞かれ、回答に困ったことがある。
みなさんは、どうお思いだろうか?
アメリカなどであればそれが法律として存在しているため、そのような意見が出てきにくい。
虐待か否かはさておきC&Rが魚たちを残し環境保護に繋がっていることは紛れもない事実。
釣り人たちは、フィールドで魚たちと接することで、自然の変化に最も最初に気付ける立場にあると私は思う。
魚釣りと一言に言っても、その形態は実に多様。
そしてそれぞれの目的や楽しみは、まさに十人十色。
一生続けられる趣味であるがゆえ、人生のそれぞれのステージで目的や楽しみが変化してくる。
そしてその変化してくること自体が楽しみであったりする。
私自身の魚釣りの目的と楽しみについて考えてみる。
高校生の頃は誰よりもたくさん釣りたい気持ちが強く、
鮎釣りの大会に出るなどして技術の向上に興味があった。
大学では水産学を学び「魚」そのものへの興味を満たし、
釣り専門チャンネルに就職してからは、様々な釣り人に出会ってきた。
名人と呼ばれる多くの人と接する中で、「釣り人」そのものに興味を持つようになり
「釣りは人類にとって何なのだろう?」と言う哲学的なことも考えはじめた。
道具を売るためのセールスマンみたいな人もいれば、
人生を賭けた釣りとの向き合い方に感銘を受ける人もいた。
そんな経験を経て現在はフリーランスとして釣りをメインとした映像作家として活動するわけであるが、
カメラのレンズの先の被写体にとっての「釣りの目的と楽しみ」の部分を大切にし、
商業的な映像ではなく釣りの文化的側面、サブカルチャーとしての魅力を表現したいと思っている。
そして自身の釣りにおいては「旅」や「冒険」と言った部分をもっと楽しみたい。
「何が釣れるか分からない」「どんなところかわからない」
そんな知的好奇心を満たすことが今の私にとっての釣りの目的と楽しみであり、
旅先で出会う人たちとの交流もまた、ロードムービーとしてまとめてみたいと思っている。
そしてこの先10年後、20年後。
私の釣りの目的と楽しみは、どうなっているのだろう?
それもまた楽しみである。
writer ライター
岡野伸行
西中国山地の麓で育ち、魚釣りが日常にある幼少期を過ごす。
大学では水産学を学び、魚が日常にある生活を送る。
大学卒業後は釣り番組の制作会社で、釣り人が日常にいる日々を過ごす。
2023年に独立し、H.I.T. FILMSの屋号で活動開始。
商業的ではなく作家性のある釣りの映像作品を制作。
釣りを人生で一周し、現在は冒険的なフライフィッシングを好み、
釣り旅のことばかりを考える毎日を送る。
H.I.T. FILMS
https:/hitifilms.jp