ゴーレムとは、ユダヤ教の伝承にある自分で歩く泥人形。
ヘブライ語では胎児という意味があるそうです。
今や、異国の伝説に登場する怪き者の類も、ゲームや映画などのキャラクターとして聞き馴染みのあるものだったりします。
しかし、多くがそのエンターテイメントの中でファンタジックに描かれたものが頭の中のイメージになっていて、元を正せばどういう意味を持つものだったのかよく知らなかったり、勘違いをしていることも多くあります。
わたしにとっては、ゴーレムがまったくそれに当たるものでした。
そもそも、表紙からして奇怪な雰囲気が漂うこの本を手に取るまでは、ゲームの中に出てくる奇妙なキャラクターというイメージだけを持っているばかりで、ほとんど何も知らないことに変わりはなかったと思います。
自己ではない何か外側の力に操られる、命なき物。
それは、とても不吉なものを予感させるような、暗くて、恐ろしい物語。
不思議な物ですが、暗いストーリーがピタリと寄り添うことを、心地よく感じるときもあります。
どこか、自分の中に普段隠されている暗くてじとじととした部分が、そういうものを求めているのかもしれません。
ゴーレム
グスタフ・マイリンク
白水Uブックス
(文:野原こみち)