よく言われる「人間は脳の10パーセントしか使っていない」という謎ですが、これは都市伝説だそうです。
神経科学者で脳の研究家の著者が書いたこの本は、医学的な知識などほとんど持ち合わせていない私が読んでもそこそこ理解ができ(ただし、より専門的な部分についての記述は、何度かページを行ったり来たりしました・・・)、実に興味深い内容でありました。
脳がどのような機能をもち、どのような働きをしているかということについてもそうですが、脳がどのように進化してきたのか、という視点でも書かれており、表紙にもあるコピーの「その場しのぎの進化が生んだ人間らしさ」が出来上がる、人間という生物が今のカタチに出来上がる、はるかな歴史を垣間見れるような内容です。
体というものは、「私」が存在する一番身近な環境、いえ、それどころか「私そのもの」であるのに、その体の働きや状態をよく理解しないまま、ほとんどの人が生きていると思います。なぜ夢を見るのか、なぜ好き嫌いがあるのか、なぜ執着してしまうものがあるのか、なぜ苦手なことがあるのか、なぜ得意なことがあるのか。自分ではその理由を説明できないことも多々あります。
脳科学の分野から、からだの一部分であるところの脳の機能を知ってみると、自分のからだのことを理解することに繋がると思います。
いいかげんにできているかもしれないけど、今ちゃんと生きているんだから、なかなかすごいよなあ。
「その場しのぎ」で進化したんだとしても、今現在絶滅せずにいるのだから、なかなかのものだよなあ。
そんなふうに自分が生きている今を、壮大なスケールで肯定できる気持ちになりました。
とにもかくにも、生き物ってすごい。
脳はいいかげんにできている
デイヴィッド・J・リンデン
夏目 大 訳
河出文庫
(文:野原こみち)