近代文学の著名な作家の中では、漱石門下の内田百閒は、とても魅力的な随筆を多く残しています。
その中でも、とにかく食べ物のことがたくさん書いてある一冊。
百閒先生の、ごちそうそのものの話というよりも、
ごちそうが並んだテーブルを挟んだ向こう側を見通しているようなお話が多く、
そこには共に食事を楽しむ誰かの存在があります。
昔の仮名遣いですが、文章に描いている事柄は、ユニークで面白く、そこが百閒先生の魅力のひとつなんですよね。
いつの時代も、おいしいごちそうのことを考えるのは、幸せなことですからね。
シュークリームのことを思い出すときに、その向こうにある景色。
沢庵のお国によって違う、色かたち。
果物屋に並ぶ、多様なりんごの種類。
食べ物ひとつとっても、その人によって思い描く風景や思い出は、それぞれ違うんですよね。
百閒先生の目を通した、色鮮やかで、
ちょっとへそまがりで愉快な、ごちそうにまつわる話、おひとついかがですか?