夏の暑さも過ぎ去り、涼しげな風が吹く初秋の夜空、今回の上品倶楽部では、「中秋の名月」にちなみ、お月見を特集します。
秋の七草、室礼、はたまた香りを感じながら、澄んだ空に浮かぶ、お月様を眺めてみてはいかがでしょう。
初秋の草花とお月見。
七草粥でお馴染みの春の七草はすべて覚えている方も多いですが、秋の七草はご存知でしょうか。萩(はぎ)・尾花(すすき)・葛(くず)・撫子(なでしこ)・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・桔梗(ききょう)又は、木槿(むくげ)これらの草花が秋の七草と呼ばれます。いち早く秋の訪れを感じさせてくれる草花として知られてきました。
無病息災を願って、新年を迎えた一月に食す春の七草に対して、秋の七草は、「眺めて、風情を楽しむもの」と言われています。夏から秋への季節の移ろいの中、早秋の野山を彩る秋の草花たち。
丁度、中秋の名月の時期と重なることもあり、古くは万葉の時代より、名月とともに草花を愛でるという風習が今なお、私達の心に大切に受け継がれています。心地よい秋の風に吹かれながら、万葉の頃に生まれたロマンチシズムを肌で感じてみてはいかがでしょうか。
向島百花園で、初秋の草花を愛でる。
向島百花園は、約200年前の文化・文政時代、仙台出身の佐原鞠塢によって開設されました。
開設当時、太田南畝をはじめとした文人墨客が数多く常連客として訪れ、作庭にも江戸庶民の趣向をこらしました。
その後も、11代将軍家斉公などの賓客とともに、江戸庶民の行楽の場として「春夏秋冬花不断 東西南北客争来」の盛況を得、明治へ時が移ってもご幼少時代の昭和天皇、伊藤博文や乃木将軍など多くの人々に愛されてきました。
明治にうつり、数多くの工場が周辺にできるなどの環境の変化、またたびかさなる隅田川の洪水により疲弊してきましたが、大正時代初期に小倉常吉氏の支援により息を吹き返し、昭和8年、国指定の「名勝」となりました。
その後、小倉氏の遺志により百花園は東京市に寄付をされ、昭和14年に東京市の庭園として再開園されました。
都会の間にありながらも、歴史と文化、そして自然の営みを感じられることができる貴重な庭園で、中秋の名月を眺める特別な夜を過ごしてみるのも良いかも知れません。
四季折々の木々や草花、園内を流れる小川と、スカイツリーのコントラスト。都会の中で自然の息吹を楽しめる庭園です。
「月見の会」のお知らせ
向島百花園では、江戸時代から続く伝統行事「月見の会」を開催します。「月見の会」では深まりゆく秋の夜に月を観賞しながら、その風情をお楽しみいただけます。開催期間中は開園時間を21時まで延長され、行灯(あんどん)やぼんぼりに照らされた幻想的な夜の庭園が楽しめます。ぜひ、この機会に向島百花園にお出かけになってはいかがでしょう。
開催日 9月26日(土)~9月28日(月)
開催時間 9時~21時(最終入園は20時30分)
向島百花園
〒131-0032 東京都墨田区東向島3-18-3
TEL 03-3611-8705
開演時間: 午前9時~午後4時30分(閉園午後5時)
休業日: 年末年始
東武スカイツリーライン「東向島」下車 徒歩約8分
都営バス(里22)「百花園前」下車 徒歩約2~3分
※駐車場はありません
重陽の節句と室礼
暦の上では秋となりますが、まだまだ暑さ残るころ。
9月9日は五節句のひとつ「重陽の節句」の日です。「菊の節句」ともよばれ、五節句(※)の中ではいちばん最後の行事となります。中国の「重日思想」では同じ数字が重なる日は縁起の良い日となっており、9月9日はその数が最も大きいことから大切な日とされてきました。菊の花を飾り、菊の花びらを浮かべた「菊酒」を飲み交わし、長寿を祈願する風習が今日に伝えられております。
日本では、「重陽の節句」は平安時代に宮中行事として定着しました。平安貴族はこの日の前日、菊の花に真綿をかぶせ香りを移し、翌朝露を含んだその綿で肌を拭い邪気を祓ったということです。これを「着せ綿」といいます。また、この日に摘んだ菊の花を乾燥させ、枕に詰めて長寿を願う「菊枕」の風習も伝えられています。現在にも色あせない雅なアンチエイジングですね。
「重陽の節句」通じて季節感のある日をすごしてみましょう。身近な方にキク科の花束をプレゼントにしたり、「着せ綿」に応じて優雅に菊の香りのする香水をつけてみたりと。秋らしい装いで季節を先取ると気分も上がります。晩酌のひとときにはお酒を注いだ器に菊の花びらをそっと浮かべてふるまえば、ハイセンスな季節感を演出することができるでしょう。古人に習いながらお洒落に年中行事を楽しんでみることは素敵なことですね。
また、9月には「敬老の日」がありますので、「菊」を「聞く」にかけて長寿の声に耳をかたむけてみてはいかがでしょう。年配者を敬い、皆さんの健やかな長寿を願います。また秋のお彼岸も近いことから、先祖に思いを馳せることも良い行いだと思います。
ぜひ菊の花の香りを届けて下さい。
(文・室礼/すずきあき)
※五節句…正月(一月一日)、桃の節句(三月三日)、端午の節句(五月五日)、七夕(七月七日)、重陽の節句(九月九日)
(左)<着せ綿の室礼>菊の花に真綿をかぶせ、香りを移します。
(右)<お菓子の室礼>菓銘「着せ綿」練りきり製菊の練りきりに白いそぼろを綿に見立てたお菓子。
素材提供:歳時あそびの会
「歳時あそびの会」は行事にこめられた意味を知り、ふだんの生活の中で日本の四季折々の季節感を愉しめる会です。ワークショップを通じて、四季折々のものを飾ったり、味わったり、作ったりします。不定期の開催となりますが、どなたでも気軽にご参加いただけます。
http://blog.livedoor.jp/saijiasobi/
和菓子制作:ゆり屋
自然素材のやさしい味の和菓子を手づくりしています。ちょっと小ぶりで甘さ控え目ですので、日本茶だけでなく、コーヒーやワインと共にも召し上がって頂けます。
http://www.yuriya-gigli.jp
お月見と香り
お月見の室礼を用意したら、和の香りを楽しむのもまた一興。
仏教伝来とともに日本にもたらされた香は、平安時代に貴族の暮らしの中で盛んに使われるようになります。季節や気分に合わせて香りを選び、楽しむ文化は、その後も脈々と育まれてきました。気軽に香りを楽しみたいという方は、自宅ですぐに使えるスティック型や渦巻形のお香がおすすめです。
また、玄関やお部屋に吊るして楽しむ匂い袋など、常温で香るタイプのお香もあります。白檀や沈香などの和の香りはどこか懐かしく、静かに心を癒やしながら過ごすときにおすすめ。
香りは様々なものがありますが、一番良いのは、自分がリラックスできる香りを楽しむことです。
松栄堂
宝永2年(1705年)創業の、京都で300年続くお香の老舗。
「香りある豊かな暮らしをみなさまに」というコンセプトのもと、品質にこだわって製造したお香を製造・販売するお香の専門店です。
京都を中心に、大阪、東京、札幌に直営店を設け、伝統的な製法をそのままに職人の手で丹念につくる一方、職人に劣ることのない品質を、安定して供給できる新しい技術も積極的に取り入れて製造を行っています。
初心者から本格的にお香に携わる人まであらゆるニーズに応えられる幅広い品揃えが魅力。
製造販売以外にも書籍の出版やワークショップなど、さまざまな文化活動を通じて、香り文化の継承と発展に力を入れています。
店舗では、数百種類ある香りの中から、自分だけの香りを見つける楽しさを体験することができます。
熱を加えて使うスティック型や渦巻型のお香などは、実際に火をつけて香りを試すことも可能。ここでは自分の好きな香りがきっと見つかるはずです。
香老舗 松栄堂 人形町店
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-12-2
TEL 03-3664-2307
営業時間: 午前9時~午後6時
休業日: 日曜・祝日
東京メトロ 日比谷線 人形町駅 A1番出口から 徒歩5分
東京メトロ 半蔵門線 水天宮前駅 7番出口から 徒歩3分
フリーダイヤル / 0120-23-0701(午前9時~午後6時 日曜・祝日除く)