新木場駅を下車し歩く事15分、大きな横断歩道を渡った先に深い緑の森、「都立夢の島公園」が現れます。こちらの公園の一番奥に今回ご紹介する「東京都夢の島熱帯植物館」があります。
緑のアプローチを数分歩き、綺麗な芝生のアーチェリー場の先にキラキラと光る全面ガラス張りの3つのドームが重なるような外観に目を奪われます。
夢の島熱帯植物館とは
植物館よりも早く建設されていた東京スポーツ文化館のかまぼこ型の半円形の切り口の体育館と相対し、北側は帆に風を孕んだ帆船をモデルに南側は半円型で全体は球体の4半分の形を3つ連ねた形をデザインした建築です。
植物館は「植物と私たちの生活との関係を学ぶ施設」とされていますが、それ以上に数奇な運命に巻き込まれてきた「夢の島」。
戦後のわずかな期間、「東京のハワイ」夢の島海水浴場。形容詞として使われた一般名称から、現在は住居表示に固有名詞として「夢の島」が採用されています。
日本の高度成長期、東京の人口大爆発に伴い次第にゴミがあふれかえり、分別もされていないゴミの捨て場になってしまいました。当時「ゴミ戦争」と言われたほど、江東区の住民は大変な苦労を被られたそうです。
ゴミの埋め立てが終了し、清掃工場が建設されるにあたり、江東区民から要望があった「公園・競技場・野球場・プール・温室」の5施設を交換条件に設置されました。その中の“温室”が、この「夢の島熱帯植物館」です。
5施設のうち植物館とプールのある東京スポーツ文化館は、清掃工場で都内一円から集まるゴミの焼却熱で発電し、その余熱を供給されて冷房を含む空調エネルギーとして活用されている、サスティナブルな施設です。
数奇な運命を辿りながら、都民の憩いの場となった公園です。
半円型のドームが夢の島熱帯植物館です
大温室について
大温室は、Aドーム、Bドーム、Cドームの3つのドームにわかれています。
まず、Aドームの大温室に入ると、熱帯の水辺に生息する植物が見られます。音を立てて滝が流れ落ちる池では、熱帯性スイレンの花が揺れ、池の縁では木生シダのヒカゲヘゴが大きな葉を広げます。また、熱帯の河口に生息するマングローブ植物が生い茂り、熱帯の水辺の景観を再現しています。頭上から落ちる滝の下をくぐり、トンネルを抜けるとBドームに入ります。
Bドームはダイオウヤシをはじめ、巨大なヤシが林立する中に「熱帯の家」が建っています。この熱帯の家は、屋根の素材にニッパヤシの葉を使用し、風通しの良い休憩スペースになっています。家の周りではヒスイカズラやトーチジンジャーなどの珍しい花が咲きます。また、ココヤシやバナナ、カカオなどが結実し、熱帯地方の人々だけでなく、私たちの生活にも関わり深い熱帯植物が植えられています。
Cドームには、タコノキやノヤシ、ムニンヒメツバキなど、世界自然遺産に登録された小笠原諸島の植物が多く見られます。小笠原諸島は、東京都心から1.000㎞も離れた南の海上に浮かぶ亜熱帯の島々です。大陸から孤立しているため、生息する生物は独自の進化を遂げた「固有種」が多く、その中には、絶滅が危惧される種もたくさんあります。出口付近ではマダガスカル原産のオウギバショウの巨大な葉が茂り、大温室の景観をしめくくります。
庭園・広場について
温室のほか、4つの屋外の庭園と広場があります。
前庭広場は、デイゴやブーゲンビレアなど、熱帯植物の中でも寒さに比較的強く戸外でも栽培できるものを生育しています。春はブラシノキの生垣が花で真っ赤に染まり、夏は見頃を迎えた熱帯性スイレンで絵画のように美しい風景になります。カナリーヤシの木陰が広がる芝生地ではシートを広げ、持ち込みの食事を楽しむことができます。
広い芝生はピクニックシートを広げて食事も楽しむことができるスポットです。
オーストラリア庭園は、その名の通りオーストラリア原産の植物を見ることができます。
オーストラリアは日本のほぼ真南に位置し、気候は熱帯性、亜熱帯性、砂漠性、温帯性と大きく4つの気候に分けられます。この変化に富んだ気候と広大な自然の中、在来植物は約24.000種あるといわれています。そして、バンクシアやカリステモンなど、ユニークな形状をした植物が多いことが特徴です。また、庭園からはオーストラリア原産のユーカリが林立する景観を楽しめます。
ウッドデッキと煉瓦づくりがおしゃれな雰囲気のオーストラリア庭園。
ユニークな形状をした植物が多いオーストラリア原産植物。
ハーブ園は、ラベンダーやマジョラム、ミントなど、香りだけでなく食用や薬用、香辛料として利用される様々なハーブを生育しています。隣接する熱帯畑では、夏にジャガイモやワタなどの熱帯原産の作物も育てています。中央に植えられたジャカランダは、6月頃には紫色の花で満開になります。
食虫植物温室は、虫を捕らえて自らの栄養分にする不思議な植物“食虫植物”を中心に栽培しています。こうして、栄養を補うことで、湿地や岩場などの栄養分が不足している土地でも生育することができます。ここでは、ウツボカズラやハエトリグサなどの約9種を常時展示し、虫を捕らえる仕組みを解説しています。
ユニークな形の食虫植物をたくさんみることができる温室です。
ショップ
帆船の帆をイメージし独特の形状をしている大温室ドームをキーホルダーにした商品を始め、小笠原諸島の貴重な植物をモチーフにしたグッズなど、様々なアイテムを揃えております。緑に囲まれてゆっくりとくつろぎ楽しみながら植物を学んだ後に、感動と想い出を形として残せるギフトを笑顔と一緒に持ち帰っていただけるよう準備してお待ちしております。
植物にまつわるギフトをおみやげとしていかがでしょう?
体験・学習施設
夢の島熱帯植物館には、体験や学習ができる設備も整っています。
映像ホールは、植物たちのふるさとである熱帯の風景やそこで暮らす人々の生活を、約15分の映像でご紹介します。シネマスコープの大画面とサラウンド方式の音響が、レトロな臨場感をつくりだしています。
また、企画展示室では熱帯地域や植物に関する展示を、テーマを変えながら通年で行っています。パネルや写真を使った解説だけでなく、時には実物を展示しているので、子どもから大人まで楽しむことができます。
最後にイベントホールです。このホールでは、植物と人々の生活のかかわりについて、さまざまな角度からわかりやすく紹介しています。明るく広々とした空間を活かした展示やコンサートはもちろん、生きた植物や素材に触れることのできるイベントやワークショップも開催しています。
映像ホール
企画展示室
イベントホール
音声ガイドアプリ「ゆめねつガイド」
館内の植物を写真と音声で解説するスタンダードな音声ガイドアプリです。
ガイドのある植物の近くにはガイド番号が掲示されています。
植物館の外にいても夢の島熱帯植物館の植物について学ぶことができます。
対応機種
iOS:iOS12以上 Android:OS5以上
言語:日本語、英語
利用料金:無料
※アプリのダウンロードや利用に伴う通信費はお客様のご負担となります。
App Storeはこちら▶︎
Google Playはこちら▶︎
夢の島熱帯植物館から上品倶楽部読者の皆さまへ
数奇な運命に彩られ、激動の時代を過ごした「夢の島」。そこに屹立する「夢の島熱帯植物館」は文字通り熱帯植物や都心から1,000㎞離れた東京都の小笠原の植物を紹介する施設です。熱帯植物たちの醸し出す生命力に触れていただければ明日からの活力が湧いてくるのではないでしょうか。
また、それだけでなく私たちの永遠のテーマであるゴミの廃棄問題を乗り越えてきた象徴でもある施設です。
SDGsが叫ばれる昨今、既に36年前に建設された夢の島エリアでリサイクルを実現してきた証人ともいえる熱帯植物館は、これからも環境問題を考えるきっかけづくりに貢献する施設としての活動に寄与していきたいと考えております。
編集後記
暑かった夏が過ぎ、遅い秋の訪れを感じ始めた晴れた日に「夢の島熱帯植物館」を探訪してきました。
最寄り駅の新木場駅は、色んなイベントが開催されるビッグサイトへの乗り換えで利用する方は多いと思いますが、反対側の夢の島方面へ向かうのは、私自身も本当に久しぶりでした。
このエリアは本文や上記メッセージにもあるようにかつては東京のゴミ廃棄の場所として印象づけられていました。
しかし、今は立派な施設のもと、意味のあるリサイクル事業が推進されています。
「夢の島熱帯植物館」だけではなく、隣接するプールなどにも活用されていて多くの都民の憩いの場となっているのを実感しました。そして広い公園やお隣のヨットハーバーを眺めながら散策したり、美しい熱帯の植物に触れる時間は、心の癒しになりました。
*画像提供:東京都夢の島熱帯植物館
東京都夢の島熱帯植物館
〒136-0081 江東区夢の島2-1-2
入場料:一般 250円/65歳以上(身分証をお持ちください) 120円/中学生(都外からお越しの方) 100円/中学生(都内在住もしくは在学)・小学生以下 無料/
開館時間:9時30分~17時(入館は16時までとなります)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日) 12月29日~1月3日
WEBサイト: https://www.yumenoshima.jp/botanicalhall
<アクセス>
東京メトロ有楽町線、JR京葉線、りんかい線
『新木場駅』下車、徒歩13分
『新木場駅』下車、徒歩13分
都営バス
都営バス「夢の島」バス停下車、徒歩5分
首都高速湾岸線:東京方面からの場合
新木場出口より湾岸道路(国道357号線)を直進、最初の信号をUターンして東京方面に向かい、夢の島交差点右折、2つ目の江東区夢の島競技場前の信号を右折してください。
首都高速道路湾岸線:千葉方面からの場合
新木場出口を出て湾岸道路(国道357号線)を東京方面に向かい、夢の島交差点を右折、2つ目の江東区夢の島競技場前の信号を右折明治通り沿いに駐車場入り口があります。
(東陽町方面から来た場合左手)
青い看板が目印です。
駐車場入り口を入って右側の「南側(第一)駐車場」をご利用下さい。※一番奥に停めて頂くと施設に近く便利です!(植物館まで徒歩4分)
都立夢の島公園 駐車場についてのお問合せ
駐車場の料金などについては下記にお願いいたします
HP https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/access042.html
TEL 03-5569-4394