私の本棚からvol.29

新月の子どもたち 斉藤 倫 作/花松 あゆみ 画

新月の子どもたち
斉藤 倫 作/花松 あゆみ 画
ブロンズ新社

 

 

 子どもの頃、学校の図書室が好きでした。集団行動があまり得意ではなかった私は、大勢の中にいると知らず知らずのうちにがんばりすぎてしまったり、つよく感情表現するまわりの人に気持ちが引っ張られてしまうことがたびたびあり、そんなときは休み時間に静かな図書室に行って、本を読みながら休憩していました。
 体は元気だけどちょっと静かなところで心を落ち着けたい、そういうときは大人になってからも当然あって、今はコーヒーを飲みながら想いに耽ったりするのですが、コーヒーの美味しさもわからない子供時代は、ずいぶん図書室と本に助けられたものです。
 子どもから大人に変わる揺らぐような思春期は、自分の体も心もまるで借り物のようで、ただひたすらに言い様のない居心地の悪さを感じていました。今考えると、みんながいつか大人になるのだから、変化の速度で何かが評価されるわけではないのに、子どもであることをやめていく自分の体と、まだ子どもらしさが残っている同級生、そのただ一時の通過点でしかない現実に、折り合いをつけるのに非常に苦労しました。
 今振り返ればなんでもないことです。過ぎてしまったら、当たり前のこととして受け入れられた。だけど、当時の苦しさは今も忘れられず記憶のかけらとして残っていて、あの頃の自分に何も心配いらない、大丈夫だよ、と声をかけてあげたいと、いまだに思ったりします。
 先日この素敵な装丁の児童書に出会って、あの頃のことをまた鮮明に思い出しました。  

 「新月の子どもたち」は、ちょうど声変わりが始まった男の子が主人公。トロイガルトという不思議な世界にいるレインという子どもと視点が入れ替わりながら、現実の自分が直面している問題に向き合っていく物語です。

 児童向けの文学ですが、大人にもぜひ多くの方に読んでいただきたい一冊です。
 星の王子さまの作者、サン=テグジュペリが言うように「おとなは、だれも、はじめは子供だった」のだから、きっとかつての自分が物語の登場人物のだれかに重なって見えるはずです。
(文・野原こみち)

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