世界のカバン博物館を訪ねて

江戸建物探訪

東京の観光名所として、日々多くの人で溢れる、歴史ある下町浅草。
スカイツリーも間近に見えるこの地域は、古くから物づくりの企業がたくさん軒を構える場所でもあります。今回はその中でも、日本の鞄メーカーの草分け的な存在である、エース株式会社が運営する私設博物館「世界のカバン博物館」を紹介します。

 

世界のカバン博物館とは

世界のカバン博物館は、さまざまな価値を有する約700点のカバンを収蔵する、世界的に珍しい博物館です。
カバンの歴史を学んだり、日々利用しているカバンや旅行で活用するスーツケースの作り方や素材について知ることができ、また、世界中から集められた国それぞれの特色をもった展示品のカバンを見ながら、人間の多様な暮らしについて思いを巡らせることができます。

時代の中でカバンはどんな役割を果たしたか。その期限や発展史をわかりやすく紹介している年表。

革製のカバンの起源は、馬具と深い繋がりがあります。産業革命により、機関車や自動車が開発されたことで仕事が減った馬具職人は、それまでの技術を生かし、カバンを作り始めます。

 

創設者/初代館長 新川柳作の思い

世界のカバン博物館の創設には、エース株式会社創業者の新川柳作の、カバン文化発展への熱い思いがありました。
エース株式会社の創業者である新川柳作は1958年の欧州視察旅行の際、ドイツ・オッフェンバッハ市の皮革博物館を見学する機会を得ました。しかし、無数に展示される皮革製品の中にカバンは10点程度しか紹介されておらず、新川は何か物足りない思いを強く心に残して帰国しました。

「生業を営ませていただいているカバンを通じて、何か社会に恩返しできないか」と常々考えていた新川の心にその時から「世界中のカバンを集め、もっと多くの方に各国の文化や風俗を知っていただこう」という強い想いが芽生えました。この構想から18年、国内外の高い技術を誇る職人たちの製品を精力的に収集し、1975年当時としては珍しい企業内博物館として現在の博物館の前身施設「世界のカバン館」を開設させました。

カバンを天職として歩んだ、新川柳作(1915-2008)

 

展示エリア

世界5大陸50カ国以上から収集された希少価値の高いコレクションをはじめ、展示品から、カバンの歴史、文化に触れることができます。
展示エリア「カバンのひみつ」では、いつも何気なく使っているカバンの製造工程や技術なども解説しています。
また、「世界のカバンコレクション」には世界中から集められた700点あまりの収蔵品から、その都度コレクションをセレクトして展示しています。中には、クロコダイル12匹を使った世界に3個しかない最高級船旅用トランクや、1点もののシマウマのボストンバッグ、美しいクジャクの羽を使ったハンドバッグなど、目を見張るほどの名品も。

旅行で多くの人が使用するスーツケースにはこんなにたくさんのパーツが使われています。

カバンの素材や製造工程を知ることができる展示や映像。

日頃のお手入れ方法や疑問点に答えをくれるような展示も。バッグの形の展示物をひっくり返すと説明が書いてある、カバン専門の博物館ならではの趣向です。

色とりどりのパーツは、ものづくりが好きな人なら見ているだけでワクワクしますね。

古い映画やドラマでヨーロッパの貴族が使っていたようなトランク。年代物の収集品です。

五大陸のカバン文化を一堂に集めた「世界のカバンコレクション」。

欧米はもちろん、中央アジアやアフリカの民族がつくった貴重なカバンも。その土地それぞれの文化の違いが、素材や装飾に表れています。

 
 

創業者の歩みと歴史を知る 新川柳作記念館

世界のカバン博物館の一つ上の階には、エース株式会社創業者で博物館の創設者でもある新川柳作記念館が併設されています。
太平洋戦争、激動の昭和を生きながら、カバンづくりに情熱を燃やし日本の産業に貢献した創業者の人生を知ることができます。
カバンづくりを天職と考え、使う人のことを考えながら、生涯にわたってより良い製品をつくるためのチャレンジを続けた起業家の人生をたどることで、これからより良い未来をつくっていくための智慧を読み解くことができると思います。

入口には、新川柳作を幼少期から支えた言葉も。

企業家としての素地が形成された幼少期から創業まで、その後の事業展開と、カバン一筋の人生年表を辿っていきます。

カバン史上一大革命といわれた、当時未知の素材であったナイロンを使ったバッグを心血を注いで開発。50〜60代の方は、懐かしいと感じる人も多いでしょう。

自分のバッグを置くと、古今東西の名言がランダムで表示される楽しいブースも。

 
 

こころのふるさと名言集
新川柳作記念館でも表示された、古今東西の偉人の名言を集めた日めくりカレンダー「こころのふるさと名言集」。
こちらは、来館された際にはご希望の方に配布しているそうです。来館記念のおみやげに。

 
 

 
 

世界のカバン博物館から上品倶楽部読者の皆さまへ

日本らしい情緒が残る浅草。賑わいから少し離れた隅田川のほとりに、弊館「世界のカバン博物館」は、あります。

浅草には、観光地ともうひとつの顔があります。それは職人的な「ものづくり」の場所としての側面です。
弊館は、今や普通に使われているナイロン製のカバンを業界で初めて作り出しカバンづくりに生涯を捧げた、エースの創業者である新川柳作が、何か社会にお返しできないかと考え1975年に設立しました。
現在約700点 収蔵されているカバンを通して、世界の風土や歴史が紹介されている世界的にも類を見ないユニークな博物館です。
また、8階部分には創業者 新川柳作の記念館を併設しており、両階で世界のカバンの歴史、エースの歴史、著名人からの寄贈品等、多くのカバンの秘密をご覧いただけます。世代を問わず見応えタップリな場所です。是非一度足をお運びください。
館長 難波敏史

 
 

編集後記

今回の「世界のカバン博物館」訪問では、カバンの歴史や世界各国の文化とカバンとの繋がりなどを、様々な展示品と共に知るいい機会となったのは勿論ですが、展示品の中には、学生時代に愛用していたバッグや、青春時代を思い出す懐かしいカバンとの対面が出来て、その当時を思い出したりして、とても嬉しい時間となりました。
皆さんも、こちらを訪れる事で思い出す何かが見つかるかもしれません。

去年の春以降、コロナ禍で多くの人が我慢していた旅行や帰省など、自由に出かける事が出来るようになり、ますますバッグやスーツケースが活躍しています。気分も新たに、新しいカバンを手に春の旅行などを楽しみたくなりました。

 
 


世界のカバン博物館 | 新川柳作記念館

〒111-0043 東京都台東区駒形1-8-10(エース東京店内)

入館料:無料
開館時間:10:00〜16:30(最終入場 16:00)
休館日:日曜・祝日(夏季/年末年始及び不定休有) ご来館前にホームページでご確認ください
WEBサイト: https://www.ace.jp/museum/

<アクセス>
都営地下鉄浅草線 浅草駅A1出口 約50m
都営地下鉄大江戸線 蔵前駅A5出口 約360m

東京メトロ銀座線 浅草駅2番出口 約500m
東京メトロ銀座線 田原町駅2・3番出口 約500m

 

 

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