江戸東京たてもの園を訪ねて

江戸建物探訪

今回紹介する江戸東京たてもの園は、JR中央線武蔵小金井駅からバスで5分ほどの場所にあります。
桜の名所としても知られる玉川上水沿いに位置した広大な小金井公園の中に位置する江戸東京たてもの園は、うつりゆく時代とともに失われていく建物を移築、保存している博物館です。広い園内を散策しながら歴史的建造物の遺構を楽しむことができるスポットです。

 

自然豊かな小金井公園の中にある、江戸東京たてもの園

江戸東京たてもの園がつくられた場所には、1991(平成3)年まで「武蔵野郷土館」が、原始・古代から近・現代にいたる武蔵野の生い立ちをテーマに、さまざまな博物館活動を行っていました。江戸東京たてもの園は、その旧武蔵野郷土館の貴重な資料を引き継ぎ、また、高い文化的価値がありながら現地保存が困難となった、江戸時代から昭和中期までの建造物を移築復元し、展示しています。

園内は、東京都に似た横長の形になっており、3つのゾーンに分けられています。東ゾーンの下町エリアには商家が並ぶ下町の街並み、センターゾーンには徳川家ゆかりの霊廟など歴史的な建物、西ゾーンには山の手のさまざまな建築様式の住宅や多摩地域の茅葺き民家などが立ち並んでいます。ひとつひとつの建物はもちろん、このエリアの街並みも見どころのひとつです。

園内マップをみると、東京都の形になんとなく似ていることがわかります。

昔懐かしい街並みを楽しめる下町エリア

東京都の東側といえば、浅草などの下町をイメージされると思います。江戸東京たてもの園の東側には、そんな下町の風情を味わえるエリアが広がっています。このエリアにある復元された建物は、商家や居酒屋、銭湯などの施設としてつかわれていたもので、商店の品物が置かれていたり、当時の雰囲気を感じられるような展示になっています。

また、店蔵型休憩所となっているたべもの処「蔵」では、武蔵野の伝統の味を伝える手打ちうどんや日替わり弁当が食べられます。

突き当たりに大きな銭湯が見える下町エリアの中通りは、時代を遡ってどこかの商店街に訪れたような感覚になります。

建物の前面を銅板で覆った看板建築の、植村邸。年代とともに生じた緑青が重厚な趣きです。

商店にはそのお店が営業していた当時をイメージできるような商品の陳列も。

昭和の時代にはどこの商店街でも見かけたような店が並びます。

欅一枚板の看板が印象的な小寺醤油店は、白金にあった商店。

下町エリアの最も目を引くランドマーク子宝湯。

正面入口上に見える唐破風の下の七福神の宝船の彫刻は、これだけでも二階屋が立つほどに経費がかけられていた意匠。

内部も観覧可。天井が高く開放的な空間で、実際の営業時には憩いの場としてもたくさんの人に利用されてきたことを想像することができます。

 
 

政治家の邸宅など歴史ある建物が並ぶ、センターゾーン

江戸東京たてもの園の中程にあるセンターゾーンは、出入り口になるビジターセンター(旧光華殿)や展示室があるほか、高橋是清邸や旧自証院霊屋などの歴史を伝える建造物が復元・展示されています。庭園、樹木なども多く、自然豊かな風景を楽しみながら散策できるスポットです。

明治から昭和のはじめにかけて国政を担った高橋是清邸。

窓につかわれているガラスは、現在では生産されていない貴重な建材で、波のようなゆらぎが柔らかい光をつくります。

 
 

西ゾーン 明治から昭和中期に建てられた住宅が立ち並ぶ山の手エリア

山の手通りに面して、さまざまな建築様式の住宅が復元・展示されています。
赤と白の印象的な洋館デ・ラランデ邸は、カフェとして利用することもできます。

建築家前川國男の邸宅は、西ゾーンでも人気が高いスポット。東京都指定有形文化財にも指定されています。

前川邸は中に入るとまた違った印象をうけます。デザイン性の高いモダンな創りで隅々までこだわってつくられていることがわかります。

三井八郎右衞門邸は、日本近代史に三井財閥として名を残した三井八郎右衞門高公氏の第二次世界大戦後の邸宅。

一階の食堂。壁面や天井絵をはじめ、隅々まで凝った意匠が施されています。

襖、障子、杉戸には明治期の円山四条派の画家による花鳥風月の絵画が描かれています。(建物内のものは複製)

 
 

茅葺き屋根と土間のある民家のエリア

西ゾーンでもさらに西側のエリアは、昔懐かしい茅葺きの民家が並びます。

江戸時代八王子に配備された徳川家の家臣団の家屋、八王子千人同心組頭の家です。

江戸時代後期に建てられた農家、吉野家。式台付きの玄関や付書院のある奥座敷に格式をみることができます。

陰翳礼讃と表現される、生活と自然とが一体化した日本古来の住まいの形を垣間見ることができます。

 
 

江戸東京たてもの園に展示している建造物は今回紹介したもの以外にもまだまだたくさんあります。ぜひ来園してお楽しみください。

 
 

ミュージアムショップ

園内をゆっくり散策したあとは、ビジターセンターのミュージアムショップでおみやげを選びましょう。江戸東京たてもの園マスコットキャラクター「えどまる」の関連商品をはじめ、手ぬぐいなど施設のグッズや、江戸東京に関する書籍など、家に帰ってからも楽しめるアイテムがたくさんあります。
また、ミュージアムショップの奥のカフェでは、一息つけるイートインメニューもあります。

 
 

企画展のご案内
〈特別展〉 江戸東京博物館コレクション〜江戸東京のまちづくり〜
2023年(令和5)9月16日(土)~12月17日(日)
1993年(平成5)3月28日の開館以来、江戸から東京の歴史を豊富な資料と模型を用いて紹介する博物館として親しまれている東京都江戸東京博物館。現在、大規模な改修工事実施のため、長期間の休館となっています。
 今回の特別展「江戸東京博物館コレクション〜江戸東京のまちづくり〜」は、江戸東京博物館の常設展の中からまちづくりを紹介するコーナーを取り上げ、そこで展示されていた資料や模型などを用いて江戸から近現代の東京のまちの変遷を紹介します。

〈特別展〉 江戸東京博物館コレクション ~江戸東京のくらしと乗り物~
2024年3月23日(土)~7月7日(日)
鉄道、自転車、人力車など、各乗り物の活躍の変遷は、都市の時代相を表現していると言えるでしょう。乗車している人も、時代が遡るほど身分・階層が限定されます。また乗り物に伴い、動力となる奉仕者や制作する職人もいました。
江戸東京博物館が所蔵する乗り物資料から、都市のなかの一断面をご紹介いたします。


 
 

江戸東京たてもの園から上品倶楽部読者の皆さまへ

江戸東京たてもの園は、東京都江戸東京博物館の分館として1993年に開園した野外博物館です。
歴史ある建物が立ち並ぶ園内では四季折々の風景が楽しめ、季節ごとの行事や催しのほか、展示室では歴史や民俗、建築に関する展覧会を行っています。
豊かな自然の中で、かつての人々のくらしの様子や生活文化をぜひご体感ください。

 
 

編集後記

取材当日は晴天にも恵まれて、園内散策日和でした。メインの展示物が「たてもの」なので当然ですが、想像以上に園内が広く、記事内で紹介しきれないほど見どころがいっぱいでした。建築や歴史に興味がある人なら、丸一日園内で過ごしても良いくらい楽しめるスポットだと思います。一般の美術館、博物館よりも、たくさん歩きますので、ぜひ履きなれた靴と動きやすい服装で訪れてみてくださいね!

 
 


江戸東京たてもの園

〒184-0005 東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園内)
042-388-3300(代表)

開園時間:4月~9月:午前9時30分~午後5時30分
10月~3月:午前9時30分~午後4時30分
※入園は閉園時刻の30分前までとなっています。
休園日:毎週月曜日(月曜日が祝日または振替休日の場合は、その翌日)年末年始 詳しくはオフィシャルサイトでご確認ください
WEBサイト: https://www.tatemonoen.jp/
入園料:一般400円、65歳以上の方200円、大学生(専修・各種含む)320円、高校生・中学生(都外)200円 ※中学生(都内在住または在学)・小学生・未就学児童は無料です。

<アクセス>
JR中央線武蔵小金井駅北口からバス5分
西武バス:2、3番のりばより、「小金井公園西口」下車。徒歩5分。
関東バス:4番のりばより、「江戸東京たてもの園前」下車。徒歩3分。

 

 

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