東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センターを訪ねて

江戸建物探訪


 

小田急線代々木上原駅からほど近い場所、井の頭通りを北側に少し坂をのぼったところに、尖塔とドーム屋根の美しい建物が見えてきます。小田急線の車窓からも印象的に見えるこの施設は、「東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センター」というイスラームのモスクです。こちらは、在日のムスリムの方々のための礼拝堂と交流施設ですが、朝10時から夕方6時まで、一般の見学者にも開かれているため、施設内を見学することができます。

 

東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センターとは
 
東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センターは、東アジアにおいてイスラームとトルコの文化を象徴する場所です。
その歴史は、戦前にまで遡ります。
ロシア革命を逃れ、日本へ避難して来たカザン州のトルコ系民族タタール人たちの礼拝所を求める動きが、日本政府の協力によって結実したのが1938年(昭和 13年)に竣工する東京回教礼拝堂です。この礼拝所は、その後、半世紀以上にわたり在日のイスラーム教徒たちの心の拠り所となってきましたが、老朽化により1986年に取り壊され、2000年に現在の東京ジャーミイ・ディヤーナトトルコ文化センターとして生まれ変わりました。
オスマン朝の様式によって建設された東京ジャーミイのミナレット(尖塔)やドーム、館内各所に施された意匠の数々は、どれも繊細で流麗な芸術作品です。

井の頭通りに面しているドーム型の礼拝堂、手前の建物は2018年に新設されたディヤーナト トルコ文化センター。この建物の外観は、トルコの伝統的な家屋の様式です。

 

モスクの位置が遠くからでもわかるようにランドマークのようにそそり立つ、白く美しいミナレット(尖塔)。

 

オスマン様式の伝統的建築 美しい装飾の数々
 
イスラーム芸術は東京ジャーミイの至る所で見ることができます。
門扉などに施されている幾何学模様の装飾は、小さい木片を寄せあつめて作品を作る芸術です。幾何学模様と植物模様が、東京ジャーミイの装飾の大きな特徴です。
また、館内の壁や天井には流麗なアラビア語のコーランの一節が随所に描かれています。

 

切断された小さい木片を寄せ集めてつくられている幾何学模様の東京ジャーミィの門扉。

 

入り口外壁上部に施されているアラビア語の書道。
その下にはトルコを象徴する花であるチューリップとカーネーションのレリーフがあります。

 

入口ホール横には、伝統的なトルコ民家の応接間が再現されています。

 

さまざまな講演やイベントが行われる多目的ホール

 

そして、東京ジャーミイの一番の見どころは、なんといっても二階の礼拝堂の美しさです。
礼拝堂に入ると、大小ドームが形づくる空間の大きさ、壁に施されたアラビア語の書道の流麗さ、窓にはめこまれたステンドグラスの彩りや繊細なアラベスク模様の美しさに圧倒されます。
*礼拝堂は自由に見学が可能ですが、ムスリムの方々の礼拝の妨げにならないよう、決まりを守って見学しましょう。くわしくは東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センターホームページをご覧ください。
 

礼拝堂は、メッカの方向を示す壁の凹みが前方正面にあり、左右対称となっています。

 

六基の半ドームで支えられた大ドーム。
礼拝堂中央のシャンデリア下から上を見上げると内部空間が六角形で構成されていることがわかります。

 

ステンドグラスは、レウゼンと呼ばれる石膏の窓枠に着色したガラスをはめこみ模様を描く技術。

 

外壁に取り付けられてある「鳥の宮殿(人口の巣箱)」の彫刻。
イスラームの教えである生き物への慈悲の表れであり、
空を飛ぶ鳥に羽を休めていきなさい、と告げています。

 
 

ハラールマーケット
 
東京ジャーミイとディヤーナトトルコ文化センターをつなぐ1階にあるのが、ハラールマーケット。こちらは、日本では入手することが困難なハラール食材や、トルコやマレーシア、インドネシアなどの国々の食材や、雑貨・食器などが販売されています。
特に、トルコヨーグルトは早々に売り切れてしまうことがあるほどの人気。他にも、イチジクジャム、トルコの伝統的なスウィーツバクラヴァ、焼き目をつけて食べるとおいしいハリムチーズ、蜂の巣入りのはちみつコムハニーなどが人気商品です。一般のスーパーなどでは手に入りにくい食材を見つけることができるので、エスニックフードに興味がある方にはぜひ訪れていただきたい場所です。

 

日本で手に入りづらいめずらしい食材やトルコの伝統的な食器や雑貨などが販売されています。

 

店長さんおすすめのトルコの濃厚な巣入りはちみつ。

 

レジにはおすすめ商品やケーキなどがあります。
窓際のイートイン席や、多目的ホールにて食べることが可能。

 

伝統的なトルコの食べ物バクラヴァは、ピスタチオ・くるみなどをパイ生地で包んだお菓子。
濃厚ですがくせになる甘さでトルコの紅茶と相性抜群です。

 
 

土日祝日 東京ジャーミイツアー
 
毎週土曜・日曜、また祝日には、14時30分開始のガイド付き見学ツアーが行われています。ガイドの方が施設内の説明をしてくださいますので、初めて東京ジャーミイに訪れる際には参加してみてはいかがでしょうか。
詳しくは、東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センターのWEBサイトをご覧ください。
東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センターWEBサイト ガイド付き見学について

 
 

編集後記
 
代々木上原を通りかかるたびにとても気になっていた、存在感のある美しい建物、東京ジャーミイを今回初めて訪れてみました。外観からもエキゾチズムを感じることができますが、施設内の随所に施されたイスラーム芸術、とくに礼拝堂内の美しさには息を呑むほど驚きました。長い間ムスリムの方々に愛されている神聖な場所は、見学に訪れた私たちの心まで癒し、穏やかな気持ちにさせてくれる、特別な力を宿しているように感じました。
日本国内でもイスラーム芸術に触れられる場所は多くないと思います。ぜひ皆様も一度、その美しさを体感してみてください。

 


東京ジャーミイ・ディヤーナト トルコ文化センター

〒151-0065 東京都渋谷区大山町1-19
TEL:03-5790-0760
<アクセス>
・新宿駅から:小田急線代々木上原駅下車、井ノ頭通りに出て小田急線の高架下を通り徒歩5分
・渋谷駅から:地下鉄半蔵門線(銀座線)表参道駅で千代田線に乗り換え代々木上原駅下車、井ノ頭通りに出て小田急線の高架下を通り徒歩5分
開館時間:10:00~18:00 (ハラールマーケットは19:00)
定休日:年中無休

WEBサイト: https://tokyocamii.org/ja/

 

 

CATEGORY

TAGS

食卓に輝く太陽のようなお皿 Sunshine Drape サンシャインドレープ 東京∞散歩
Life with Records chaabee イベント情報