人工知能というのは、一昔前までは映画や小説の中のものだったのに、今では身近な存在になりつつあります。
暮らしの中で、スマートスピーカーのAIに音楽を聞かせてもらったり、リビングの電気をつけてもらったり、日頃何かとお世話になっている人も多いのではないかと思います。かくいう私もそのうちの一人です。
暮らしを便利にするために一役も二役もかっている人工知能ですが、私たち人間が未来のことを想像した場合、イメージの中では少し怖い予想をしてしまうこともあります。体を持ち、意思を持った人工知能がいずれは人類の大きな敵になる・・・そんなSF映画もたくさんみた気がしますし、私自身も近い将来現実となりそうな怖い想像をしてしまったことは正直なところ何度もあります。
しかし、もし、人工知能が人間と変わらないほどの感情や心が宿り、それを表現できることができたなら。そして、ひたすらに人間に尽くすという使命を失わない無垢な魂をもっていたのなら。
人工知能がいる未来がディストピアではなく、新たな理想的な世界・ユートピアになるかもしれません。
ただし、その世界の実現には、人間が感謝や労りの心を失わないでいるということが、不可欠なのだと思います。
「クララとお日さま」の主人公は、人工頭脳を搭載したAF(人工親友)です。病弱な少女ジョジーとAFのクララの関係を軸にストーリーが展開されます。今よりさらに密接になると予想される人間と人工知能の未来をこのお話をきっかけにもう少し深く考えてみようと思いました。
この、「私の本棚」の記念すべき第一冊目が同じカズオイシグロの「忘れられた巨人」でした。今やノーベル文学賞も受賞し、名実ともに世界的な偉大な作家になりつつあるカズオイシグロさんですが、新しい作品の中でもその品格と知性に輝くような言葉たちを精彩な筆致でつむぎ出されています。私は原書で読んだことはまだありませんが、英語が得意な友達によれば、「カズオイシグロの本は、ものすごく綺麗な英文で書かれている」のだそうです。
いつか、その綺麗な英文とそうでない英文の違いを自分の力で感じられるまで読解力を上げること。それが、今の私の当面の目標です。
(文・野原こみち)