武相荘を訪ねて

江戸建物探訪

 

小田急線で新宿からおよそ40分。都心の喧騒から離れた鶴川に、白洲次郎・正子一家の暮らした住まい“武相荘(ぶあいそう)”があります。この昔懐かしい趣きの旧白洲邸は、2001年にご親族の手によって開館され、今も多くの方に愛されています。
今回は新緑の木々の鮮やかさに魅入られながら、この“武相荘”を訪ねてみました。

 

白洲次郎・白洲正子が選んだ“住処”
若くしてイギリスケンブリッジ大学に留学し、終戦後吉田茂に請われGHQとの折衡にあたり「従順ならざる唯一の日本人」と称された白洲次郎。そして、樺山伯爵家の次女として生まれ、女性として初めて能舞台に立ち、文壇や染織工芸の蒐集で多彩な活躍をした白洲正子。
ふたりが鶴川に移り住んだのは、昭和18年のこと。空襲から逃れられ、自給自足の生活ができる安全な土地をもとめて、当時はまだ農村であった鶴川に移住を決めました。武相荘のシンボル的な存在である茅葺き屋根の家は、白洲夫妻が元々の持ち主の方から買い取ったときにすでに100年近くは経過していたそうで、丁寧に修繕を重ねて、現代まで残しているという、貴重な建物です。

 

緩やかなカーブを描く道路側の入り口

 

正子が気に入り移築したという、情緒ある瓦門

 

現在はミュージアムとなっている茅葺き屋根の母屋

 

夫妻ゆかりの品々
茅葺き屋根の母屋は現在ミュージアムになっており、中では白洲夫妻のさまざまなゆかりの品々を見学することができます。次郎が愛用した品や、工芸品の蒐集家であった正子が集めた陶芸、織物の展示、また正子が数々の作品を執筆した書斎など、見所も満載です。
*ミュージアム内は撮影禁止なのでご注意ください。

 

蔵書の位置もそのままにしてあるという正子書斎

 

囲炉裏端/2014年秋展より

 

奥座敷/2014年秋展より

 

ふるき良き里山の風景
都市開発が進み、かつて農村であった鶴川も今では都心部のベットタウンとして近代的な居住区になりました。白洲夫妻が人生のほとんどの時間を過ごした住居は、今や日本でも数少ない茅葺き屋根を残す家です。武相荘、そしてそれらを囲む木々や植物の中に立つと、時代をタイムスリップしたかのような不思議な感覚になります。散策路の竹林や樹木の枝には、たくさんの鳥たちも訪れている様子でした。

竹林を通り抜ける散策路

 

散策路に咲くキンラン

 

武相荘 レストラン&カフェ
武相荘にはレストラン&カフェも併設されており、自然豊かなお庭を眺めながら、食事やお茶を楽しむことができます。
レストランで提供されるメニューは、白洲家のご家族にまつわる逸話を持つメニューなどもいくつかあり、食の面からもありし日の武相荘の暮らしを垣間見ることができます。

 

レストラン前の柿の木が、若葉の天井をつくっています。

 

武相荘から上品倶楽部読者の皆さまへ
若いころ米国やイギリスに留学していた、ちょっとお洒落な夫婦が楽しく暮らした所を公開しています。
親交のあった小林秀雄、河上徹太郎、梅原龍三郎、吉田茂さんなどの文人墨客が訪れ、酒を飲み乍ら鍋を囲んで、皆さん土産に次郎の作った米や野菜を抱えて帰る、田舎のサロンだったようです。
次郎の関わった日本の敗戦処理の貴重な資料などもある、ユニークな記念館ですがそれ等はオマケで、皆さんには緑に囲まれた美味しい空気をたくさん吸って帰っていただきたいと思います。

 

編集後記
少し都心を離れ、小田急線に揺られて、鶴川の武相荘を訪れてみた今回の探訪。今や日本ではほとんど見かけることができなくなった茅葺き屋根は、のどかで懐かしく、不思議と心が安らいでいくような気がしました。私は個人的に正子さんの随筆のファンでもあるので、書斎を拝見できたことはとても嬉しいことでした。四季折々に美しい景色を見せてくれるそうなので、今度はまた別の季節に訪れたいと思っています。

 


武相荘(旧白川邸)

<アクセス>
・小田急小田原線鶴川駅下車北口より徒歩15分
・鶴川駅北口より2番乗り場の11番系統バスにて「鶴川一丁目」下車徒歩5分
・鶴川駅北口より2番乗り場の13番系統バスにて「平和台入口」下車徒歩5分

所在地: 〒195-0053 東京都町田市能ヶ谷7丁目3番2号
ミュージアム:10:00〜17:00(入館は16:30まで) Tel.042-735-5732
ショップ:10:00〜17:00 Tel.042-736-6478
レストラン&カフェ:11:00〜20:00 Tel.042-708-8633
全施設定休日: 月曜日(祝日・振替休日は営業)*夏期・冬期休館あり

WEBサイト: https://buaiso.com/

 

 

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