東京の中心部でありながら、昔懐かしい下町情緒が溢れる町、谷中。夕やけだんだんで有名な谷中銀座からほど近い場所に、朝倉彫塑館はあります。彫刻家 朝倉文夫のアトリエ兼住居だった建物を一般に公開する美術館です。今回はこの朝倉彫塑館に訪れ、主任研究員の戸張さんにお話を伺いました。
朝倉彫塑館について
当館は、彫刻家 朝倉文夫のアトリエと住居だった建物です。朝倉は東京美術学校を卒業した1907(明治40)年、24歳の時に谷中にアトリエと住居を構えました。当初は小さなものでしたが、その後、敷地を拡張したり増改築を繰り返したりして建築を楽しみます。
現在の建物は1935(昭和10)年に建てられました。建物は朝倉が自ら設計し、細部にいたるまで様々な工夫を凝らしており、こだわりを感じさせます。さらに、朝倉はここを「朝倉彫塑塾」と命名し、教場として広く門戸を開放して弟子を育成しました。朝倉の教育法は独自の自然観と深く結びついており、この建物にもそれが色濃く反映されています。
作品の展示について
年に一回、特別展を開催しています。それ以外の期間は常設展示ですが、年に三回ほどテーマを設けて展示替えを行っています(特集展示)。一年のうちに何度か足を運んでいただいても、また違った楽しみ方をしていただけると思います。
庭園について
アトリエと住居に四方を囲まれた中庭は、南北約10メートル、東西約14メートルの敷地のほとんどが豊かな水で満たされています。熟慮を重ねて配された巨石と樹木が濃密な空間を作り出しています。
建物のどこからでも見ることのできる庭園には、朝倉の彫刻家としての視点と芸術観がよくあらわれています。
中庭は見る視点によって表情が違い、自分のお気に入りの場所を見つける楽しみに
朝倉彫塑館の見どころ
数々の芸術作品が生み出され後進の指導の場ともなったアトリエ、また朝倉と家族が日々の暮らしを送った居住空間、その間に存在する季節ごとに移り変わる美しい庭園。現存する芸術作品はもちろんのことですが、ぜひ建物自体の素晴らしさも一緒に楽しんでいただきたいと思います。昭和を代表する芸術家の一人である朝倉文夫がどのように日々作品を作り、趣味を楽しみ、暮らしていたのかが、館内の随所から感じていただけると思います。
3階の朝陽の間は、その名の通り東からの光が差し込む部屋で、お客様をもてなす場として利用されていました
周りの景色が一望できる屋上には、庭園があり、オリーブの木や季節の花を楽しむことができます
江東区・豊洲近郊の方へ
千駄木・根津駅などからの谷根千散策や上野駅からの美術館巡りのコースに組み込んでみてはいかがでしょうか?ゆったりとした時間を過ごすお気に入りの場所のひとつにしていただけましたら幸いです。朝倉流哲学をお愉しみください。
編集後記
趣のある街並みを抜けて、たどり着いた朝倉彫塑館は、想像以上に安らげるスポットでした。朝倉文夫の芸術作品を堪能できるのはもちろんのこと、何と言ってもこの建物自体に堪らない魅力があります。中庭はそれぞれの部屋から違った景色を見せ、変幻自在のひとつの作品であるかのように思えました。また、晴れた日には屋上庭園を楽しむことができます。あたりの景色を一望することができて、とても気持ちの良い空間でした。心静かになって、五感を研ぎ澄ませたいときなど、ぜひ、訪れてみてください。
台東区立朝倉彫塑館
アクセス:JR山手線「日暮里駅」北改札を出て西口から徒歩5分
所在地: 〒110-0001 東京都台東区谷中7-18-10
開館時間: 9:30-16:30 (入館は16時まで)
休館日: 毎週月・木曜日(祝休日の場合は翌平日)、年末年始
展示替え等のため、臨時休館することがあります。
連絡先: TEL 03-3821-4549
*入館の際には靴をお脱ぎいただきます。靴下の着用をお願いいたします。
WEBサイト: http://www.taitocity.net/zaidan/asakura/