私の本棚からvol.11

月とこよみの本/監修・写真 林 完次


月とこよみの本
監修・写真 林 完次
宝島社

 

 

 夜空にぽっかりと浮かぶ月。古から良くも悪くも、人の心を惹きつけてやみません。数々の文芸作品に登場したり、恋愛のメタファーとして、多くの和歌に詠まれてきました。また、満ちたり欠けたり不安定に姿を変えるため、海外の伝承では不吉なものとして捉えられることもあります。また信仰の対象や国旗のシンボルとなったり、国や文化によってまさに多種多様な象徴ともされてきました。

 今回の一冊は、写真家で天文作家でもある著者が、美しい写真とともに、月とこよみについての様々な知識をまとめた本です。
 現在は、太陽暦であるグレゴリオ暦が国際社会で一般化しましたが、明治初期までの日本でも、月の満ち欠けのサイクルをベースに太陽年を考慮し閏年を組み入れた「太陰太陽暦」が使われていました。現在ではいわゆる旧暦と呼ばれているこよみです。
 現代の私たちは、今過ごしているのが一年のどのあたりなのか、様々な方法で簡単に調べることができますが、まだ科学も発展していない古代では、そうはいきません。月の形を見て、今日が何日かだいたい分かる太陰暦は、太陽を観測してこよみをつくる太陽暦に比べて便利で分かりやすかったため、世界中で使われていたのでしょう。
 月と自然現象には古くから関わりがあると考えられてきました。
 日本では、江戸時代の農業に関する本で「大根は闇夜に収穫すること」「穀物、果実は上り月、根菜類は下り月の月夜に蒔く」などの記載が残っており、農業の月齢管理にも太陰暦が活用されていました。
 また、海の潮汐リズムに月の引力が関係しているように、海の生き物たちの生態にも月齢が深い関わりがあります。満月の日に産卵を行うサンゴ、上弦の月や新月に同調して産卵する磯魚たちなど、海の生き物の多くに月齢が大きな影響があることがわかっているそうです。
 それでは、人間はどうでしょうか。「満月の日は出産が多い」、「満月の日は交通事故が多い」とよく耳にする説は、本当なのでしょうか。月の周期と人間の生態の関係については、まだ未知の部分が多いのだそうです。多くの自然現象に影響を及ぼす月の存在が、人間の体に全く作用しないと考えるほうが非論理的だと思えてきますが、残念ながらまだ、はっきりと解明されていません。とりあえず、自分の体調と月のリズムを照らし合わせてみれば、案外正解に近づくことができるかもしれませんね。

(文・野原こみち)