雨の降る日には欠かせない、生活の必需品、傘。
日本人は、世界の中でも特に傘が大好きな民族なのだそうです。今回はそんな、雨が降っても日が差してもお世話になる傘について、特集しました。手仕事で傘を作り続けている老舗の専門店に、傘についてのあれこれを伺いました。
イメージ:小村雪岱《おせん》木版、紙 昭和19年(1944)頃 川越市立美術館蔵
日本人と傘の関係。
しとしとと雨の日が続く梅雨の季節がくると、なんだか憂鬱。でも、お気に入りの傘を買ったあとは、雨の降る日を心待ちにしてしまう。そんな想いを抱いたことがある人も少なくないのではないでしょうか。
江戸時代の浮世絵にも、粋な蛇の目傘を手にした女性や、歌舞伎の演目「将門」にも、春雨の中、滝夜叉姫が傘をさして登場するというシーンもあります。
高温多湿の地域が大半を占める日本では、傘は生活の中での必需品です。私たちにとっては、雨の日に傘を使うことも、日差しの強い日に日傘をかざすことも、ごく当たり前の光景ですが、それは世界的に見ると意外と珍しい光景なのだそうです。欧米に目を向けると、雨が降る日に使われるのは、レインコート。傘の利用率は意外にも低いそうです。小雨ならば傘をささないなんていう話も耳にしたことがあるのではないでしょうか。日本は傘の所持率が世界一との調査結果もあります。(ウェザーニューズ)
雨が降っても、日が照りつけても、お世話になる傘。子供の頃から、当たり前のように使っていた物ですが、どうやら日本人は傘が大好きな民族のようです。
大切にしたい一本を。
急に雨が降って、その場しのぎで傘を買ってしまう。時にはそんな出逢いをした傘をずいぶんと長く使い続けるなどということもあるかも知れませんが、本当ならば自分が心から気に入った一本を、長く大切に使いたいものですよね。今回は、昭和初期から東京の中央区にて国産の傘を取り扱っている老舗の「小宮商店」に、さまざまな種類の傘をご紹介頂きました。布の素材や、機能的な部位まで、国内の職人さんならではのきめ細やかなつくりの傘は、長年に渡って大切にしたいと思える一本になるでしょう。
明治時代より、小宮商店にて傘の制作のために使用されていたミシン
傘の生地を縫い合わせる中縫いには下糸のない専用のミシンが必要です。現在も手作業で製作をしておりますが、明治時代にはこのようなミシンを手で回して作業をしていました。
今も職人の技が光る 傘を作る人の手
小宮商店では、日本の洋傘の伝統を大切にし、創業から88年経った今もなお、丁寧な手仕事による日本製の傘の制作と、職人による製品の確認作業が行われています。
品質に対する厳しい目を向けながら、生地や骨などの素材を選ぶこと。選んだ素材を、熟練の職人が手仕事でひとつひとつ傘に仕立てる。
すべては「丈夫で、長く愛着を持って実用できる傘」を、お客様に手にしていただくためのこだわりだと職人さんたちは語ります。
たとえ、ミリ単位で施す部品の調整であったり、縫い糸を留める時の小さな工夫であったり、一見なんでもないような、とても小さな違いですが、長く使えば使うほど、その使い勝手の良さと丈夫さが実感できるものになります。
傘の骨の部分に施される、ろくろ巻きやダボ巻きなどの、生地の摩擦や、汚れが移らないようにするためのパーツは、かつては国内で使用されるほとんどの傘にありましたが、安価な輸入製品が多くなるにつれ、だんだんとそのパーツが存在する傘が少なくなりました。傘を長く使うための様々な工夫は、物を大切にしたいという心の表れであるかもしれません。
骨と生地をつないでいる内側の部分は、傘を長持ちさせる上で要となるところ。職人の手により、微妙な調整がされ完成した手作りの傘は、壊れにくく丈夫です。
傘の骨の中央部分に施されるろくろ巻きは、かつてはほとんどの傘にありましたが、輸入傘にはこのような細かな部品が省かれるようになりました。
職人の手によりひとつひとつの商品の丁寧な確認作業がされます。長年、傘という商品に向き合ってきた感覚が研ぎ澄まされる作業です。
東京都伝統工芸品 認定商品
東京の伝統工芸品は、長い年月を経て東京の風土と歴史の中で生まれ、時代を超えて受け継がれた伝統的な技術・技法により作られています。伝統工芸品は、手作りの素朴な味わい、親しみやすさ、優れた機能性等が、大量生産される画一的な商品に比べて、私たちの生活に豊かさと潤いを与えてくれます。
伝統工芸品は地域に根ざした地場産業として地域経済の発展に寄与するとともに、地域の文化を担う大きな役割と果たしてきています。
「東京洋傘」は2018年3月22日に伝統工芸品として認定されました。文化や情報の集まる東京で、100年以上前から続く伝統的技法を保ちつつ機能やファッション性を発展させた洋傘を「東京洋傘」と呼んでいます。
伊砂文様
現代に息づく斬新かつ新鮮な伊砂文様。
風呂敷の柄を傘に生かしたバリエーション豊かな傘です。
晴雨兼用/綿100%
価格:16,200円
正倉院裂傘
奈良・東大寺の正倉院に今も残る染織品・正倉院裂をカーボン骨に張った傘。
正倉院裂の名に恥じない逸品です。
獅子文/鳳凰文/山羊文/狩猟文/鴛鴦唐草文/葡萄唐草文
晴雨兼用/長傘/55cm/12本骨
価格:30,000円
にじみほぐし
「ほぐし織り」とは、経糸の模様を微妙にずらして織り上げた、優しい風合いの織物。多くの職人の手を経て出来上がる、この織物は、携わった人たちの心が織り込まれています。
COLOR:ブルー/レッド/イエロー
晴雨兼用/長傘/50cm/8本骨
価格:20,000円
墨流し
墨流し染の生地を使った晴雨兼用傘。
染料を水に落とし染めていく技法により美しいマーブル模様が出来上がります。その模様は一つ一つ異なります。一点物の傘を手にしてみてください。
晴雨兼用/長傘/
50cm/8本骨
価格:28,000円
かわず張り
骨が見えないように二枚の生地を両面から張った「蛙張り(かわずばり)」の晴雨兼用傘。外側は無地、内側はボーダーでシンプルで飽きのこない、長くご愛用いただける一本です。
晴雨兼用/長傘/
50cm/8本骨
価格:18,000円
かさね
甲州織の生地は、表と裏で異なる色の糸で織られ、美しい光沢感が特徴です。カラーバリエーションも豊富。お好みの色を見つけたいですね。
雨晴兼用/長傘/
55cm/16本骨
価格:20,000円
麻両面染め日傘
麻100%の天然素材の傘。特殊な染色技術により両面色が異なります。持ち手は日本製寒竹で、洋服だけではなく、着物や浴衣にも合う日傘です。
日傘/40cm/
麻100%/長傘
価格:32,000円
ボーダーフリンジ・コーティング
コットン地の裏面コーティングでUVカット率99.99%。ドビー織のボーダーにフリンジがあり、柔らかい風合いが特徴です。
晴雨兼用傘/55cm/
一級遮光/綿100%/
長傘
価格:17,000円
甲州織・裏縞
外は無地、内に細かい縞模様を配した、大人のお洒落雨傘です。
大きめサイズなので男性でもゆったりお使いいただけます。
雨傘/65cm/
カーボン製16本骨
価格:30,000円
日本橋の傘
小宮商店
小宮商店は昭和5年、創業者・小宮宝将により、洋傘・ショールのメーカーとして東京都中央区浜町でスタートしました。今日まで、日本にはもうごくわずかになった、国産の傘を作り続けています。
現在では、日本製の傘のみならず、自社で企画し中国で製造を行った海外製の傘も取り扱っています。
日本の伝統的な生地や技法を用い、熟練職人のじっくりとした丁寧な手仕事が感じられる日本製の傘。
機能性や携帯性に優れ革新的なアイデアが込められた海外製の傘。
「売りっぱなしにはしない」ことをモットーにしているので、アフターケアやメンテナンスのご相談に乗ってもらえます。大切な傘をできるだけ長く使いたいという想いを持つ方の希望に応え、長いお付き合いをしてくれるのも嬉しいですね。
〒103-0004 東京都中央区東日本橋3-9-7 地図
TEL : 03-6206-2970 / FAX : 03-3661-9179
営業日:月曜日~金曜日10:00~18:00(水曜日は20時まで営業)※月に2度、土曜日も営業。
http://www.komiyakasa.jp