新木場といえば、豊洲から有楽町線で二駅、夢の島公園や若洲海浜公園、東京ゲートブリッジなど、公園やウォーキングのイメージが強く、東京では珍しい開放的エリアと認知されています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの競技会場も予定されており、今後注目のエリア。今回はそんなエリアにある、素晴らしい建築物をご紹介します。
ロケーション
その会館は、新木場駅から徒歩5分の場所にあります。新木場駅といえば、今や東京ディズニリゾートやお台場そして銀座・有楽町方面へ向かう中継地点の駅。毎日、乗降者で賑わいがあります。
新木場は、木場の移転先として誕生した街で、材木商の事務所や木材加工の会社が存在します。新木場の「木場」とは、木置き場で、このエリアが1970年代後半の木材業者の集団移転により「新たな木場」となったようです。そんな、「木」に深い縁のある場所に、木材会館はあります。
実は、新木場駅からだと、建物の側面となりインパクトあるファサードの表情は伺い知ることができません。あえて身を隠すかのようにメインストリートから見えづらい建て方になっています。
コンセプト
木材会館は、平成21年、東京木材問屋組合創立100周年記念事業として建設された事務所兼賃貸オフィスビル。木の魅力を示すランドマークとなることをコンセプトに設計されたのこと。なんとこの会館建設には、檜を中心に1000㎥以上の国産木材が内装・外装そして構造に使用されています。また「木材を使用する」という観点から、加工技術・流通・安全性・防災・構造・エコロジー等あらゆる視点で木材の使い方が考え抜かれています。
ファサードのインパクト
新木場駅を出て道路を挟んだ公園に立ち入ると、先ずはその建築物の外観に驚かされます。コンセプト通り、木の魅力を存分に伝えるランドマークにふさわしいファサードのデザイン。よく見ると木材がコンクリートと鉄の構造躯体を覆い、みごとに縦横に織りなされた立面構造となっています。
外観に木材を使用する安全性に対しては、「火災の際に建物が安全かどうか」の視点から、耐火性能の高い鉄筋鉄骨コンクリートで構造躯体することで、火災に対して安全な構造になっています。また階の途中に不燃処理を施した燃えない木材をファイヤーストップ材として設置し火災の拡大を防ぐ構造となっているのです。
特徴的な各フロア
建物は、地上7階、地下1階。
1階は、檜舞台もある多目的ギャラリーの他、詩吟教室や茶道教室を行う、くつろぎの和室、茶室。
外観の驚きもさることながら、エントランスよりこの1階の空間に足を運ぶとさらに木材空間を実感することになります。
7階に上がると、黒を基調としたシックなホワイエに、杉のオブジェが設置してあります。木の扉の奥には、檜の香りと明るい光に溢れた開放的で木の強さ、優しさ、美しさを体感できるホール空間。さらにホールの西側は、開放的なテラスが広がり、スカイツリーや都心の高層ビル、そして富士山までを望むことができる。まさに隠れた展望スポット。
6階は多目的利用ができる小ホール。ホールの奥の杉の立木をイメージしたオブジェが美しく素晴らしい。小ホールと会議室の間の空間には「世界の木製クラフト・コレクション」を展示するためのショーケースが設置されています。
3〜5階は開放的な檜のテラスを持った柱の見えない使いやすいオフィス空間。
2階はこの建物の持ち主である、東京木材問屋協同組合や(一社)東京都木材団体連合会事務室などがオフィスを構えています。
編集後記
日本人は古くから木に対する特別の思いを抱いてきました。そして、木のぬくもりやおおらかさなどを敏感に感じとってきました。それは今も変わりません。寧ろ、人工的なものが溢れ、空虚感・虚無感を感じる今こそ、心の奥底に木への憧憬がある方も多いでしょう。
この木材会館は、木の本質を実感させるだけでなく、木のデザイン性のすばらしさを教えてくれます。このエリアは、2020年オリンピック・パラリンピックに向け、ますます注目されるエリア。きっとこの建築物も脚光浴びるに違いありません。豊洲エリアからは、地下鉄でも2駅。木場の歴史を学びつつ、日本人と木の関係について考えつつ、この建物の前に立つのも、一興です。
*木材会館の見学は、事前の見学申し込みが必要となっています。詳しくは、下記「見学申し込みについて」のURLより、木材会館ホームページのご案内をご覧ください。
見学申し込みについて
http://www.mokuzai-tonya.jp/mokuzaikaikan/info/index.html
渡辺昭 理事長
アクセス
・JR京葉線・りんかい線・東京メトロ有楽町線 「新木場駅」南口より徒歩5分
木材会館(東京木材問屋協同組合)
〒136-0082 東京都江東区新木場1-18-8
TEL:03-5534-3111 FAX:03-5534-7711