所蔵:すみだ北斎美術館 「冨嶽三十六景 凱風快晴」
冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」や「凱風快晴(赤富士)」で誰もが知る江戸の浮世絵師、葛飾北斎。本人が生涯を過ごした墨田区本所のそばに2016年11月、墨田区立の「すみだ北斎美術館」が開館し、今まさに話題のスポットとなっています。今回はこの美術館館長、菊田さんにお話を聞きました。
豊洲からは、有楽線月島駅で大江戸線に乗り換え両国下車。地上に出て歩くこと5分。緑町公園に隣接したモダンな近代的建築物に驚かされます。ここが、すみだ北斎美術館。建築の設計は世界的有名な妹島和世氏。エントランスより入館すると外観印象とは異なる開放的なガラス張りの空間にまた驚かされます。館内の会議室に招かれインタビューが始まりました。
誰もが一度目にしたことがある「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
所蔵:すみだ北斎美術館
設立の経緯について
そもそも28年前から計画はありましたが、2012年のスカイツリーの開業にともない、実現化に向け一気に加速、昨年末開館の運びとなりました。北斎という偉大な芸術家を排出したことを誇りに思うとともに、地域に愛着を深め、区民の生涯学習の場や地域活性化の拠点として観光や産業への貢献をし、また区内外へ情報発信・交流などを目的として建てられました。
タッチパネルでわかりやすく楽しめる常設展示
当館の特徴について
当館には、北斎とその門人の作品、皆さんがよく御存じの「冨嶽三十六景」をはじめ、約1800点が所蔵されています。また世界にひとつしかない、北斎が86歳の時に描き地元牛嶋神社に奉納した絵馬「須佐之男命厄神退治之図(推定復元図)」があります。たいへん貴重なもので、当館でしか観られません。
常設展示では、北斎の生涯で制作された作品を、実物大高精細レプリカと共に、タッチパネルで楽しむことができます。(オリジナル作品は光などに弱く脆弱なため常設展示室に展示されたすべての作品は高精細レプリカです)簡単なタッチ操作で、描かれた人物の動きや表情、風景の色合いなど絵の細部を見ることができます。ゲーム感覚で楽しむことができ、子供たちにはもちろん、大人にも大人気となっています。また日本語だけではなく、英語・中国語・韓国語と世界のお客様対応も万全です。
ダークカラーでまとめられたシックな常設展示室も。
年間来場者数について
開館前は年間20万人の来館客を計画しておりました。しかし、オープン約5か月後の4月29日には早くも20万人を突破しました。地元の皆さんだけでなく日本中の北斎ファンの方が来館されています。また建築家やインテリアデザイナーといった建築関係の方も多数来館されています。来場者の3ー4%は訪日のお客様で、スカイツリーや浅草観光とセットで来館されています。
今は平均的に、1日1200〜1500人が来館され、混雑が続いてます。うれしい悲鳴ではありますが。今後はお客様への安全を第一に考えています。
館内のいたるところに特殊な建築デザインが施されています
スタッフについて
現在15名のスタッフ体制で運営しております。安全で安心して楽しんで頂くよう引き続きしっかり運営していくつもりです。
最後に一言
北斎の作品は日本だけでなく欧米においても非常に評価が高いです。北斎の魅力をまずは国内に発信していき、特に学校関係=小学生中学生の皆様の来館促進を考えております。この美術館を体験をした子供たちが、親に伝え家族に伝えて・・・最後は世界中に発信することができればと。
3年後には東京オリンピック・パラリンピックも開催されます。ここ、すみだ北斎美術館が、世界に発信する一拠点になれば最高です。
是非、一度ご覧になってください。ご来館、心よりお待ちしております。
外観だけではなく、内装もモダンな建築の館内からはスカイツリーも見えます。
三角形の窓の中央を支えるかのように、スカイツリーが。絶妙な光景。
編集後記
両国は国技館、大江戸博物館など日本の伝統文化を知る絶好のエリア。日本が世界に誇る北斎の浮世絵を展示する美術館が誕生したことは、このエリアの魅力がさらにパワーアップされた感じ。道すがらには、目の前にスカイツリーがそびえる。多くの建築関係の方が訪れるという妹島和世氏設計の建築物そのものも見ごたえ十分。豊洲からは地下鉄を乗り継いで約30分。タワーマンションのアーバンライフからしばし離れ、江戸情緒を堪能するのも一興です。
菊田 寛(きくた ひろし)館長
1954年東京生まれ
武蔵野美術大学造形学部卒業
東京都中学校の教員を経て2002年より墨田区立中学校で校長職 墨田区立両国中学校長退職後、2016年開館の「すみだ北斎美術館」初代館長に就任。
2007年~全国美術教育連盟事務局長
2011年~東京都造形教育協議会会長
2013年、全国造形教育連盟副委員長等を歴任。
公園の中でひときわ目をひくモダンな外観。
アクセス
■都営バス・墨田区内循環バス「都営両国駅前」より徒歩5分
■都営地下鉄大江戸線「両国駅」A3出口より徒歩5分
■JR総武線「両国駅」東口より徒歩9分
連絡先
〒130-0014 東京都墨田区亀沢2-7-2 地図
http://hokusai-museum.jp
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)