春の手紙

中館慶子|2020年4月16日

気が滅入る話題が続く毎日でも。
春の陽光を感じながら道に咲く花を眺めていると
自然と心が落ち着いてくる。

思えば、好きに外食をして、
好きに行きたいところへ出向き、
好きに人と会っていた毎日。
随分と環境的に贅沢をしていたなと思う。
いまは当たり前のことなのだけど。
ただ、行動に制限がかかってくると
近頃ないがしろにしていたことが
くっきりと浮かびあがってきて。
ちょっと足元を見つめ直そうという気にもなる。

お手紙を書く。
という行為もそのひとつかもしれない。
個人的に人に宛てた文章というのは
誕生日のメッセージカードか、仕事の伝言くらいのもので。
手紙をしたためるなんて、もうずいぶん長いことごぶさただ。

いま、北海道に帰省ができないから、せめてお手紙を出そう。
父が病に伏していたとき以来だから、
家族に手紙を書くだなんて何十年ぶりのことだろう。
ちょっと気恥ずかしいけれど、
引き出しの奥にしまってある便箋を取り出してみよう。

少しのがまんと、少しのくふう。

わたしには、それくらいのセーブも必要かな。時には。

writer ライター
中館慶子
北海道生まれ。
仕事でもプライベートでも、どっぷり活字と深い仲。
よく食べ・よく飲み・よく眠り、
合間を縫ってはホットヨガでツリーポーズ。
走ることも大好きで、夢は、いつかはフルマラソン!
わくわくする場所は海と本屋さん。