先日、札幌を訪れた際に、札幌駅から大通駅までの地下通路を歩いていると、何やら存在感のあるオブジェが目に入りました。
羽を広げたフクロウがアイヌの文様が入った柱に止まっている姿。精巧な木彫りで製作されたものです。
イウォルンパセカムイという名前の像。「その場を見守る尊い神」という意味だそう。
パネルを読むと、北海道平取町二風谷を流れる沙流川の下流域の水田から出土した樹齢400〜500年の埋れ木で作られているとのことで、その神々しいほどの存在感が素材の出自から裏打ちされているものであることがわかりました。
調べてみると、製作者の木彫り作家の貝澤徹さんは、その二風谷に生まれ、工芸家の父や仲間に囲まれて育ち、今や数少なくなったアイヌ文化の継承を続ける人のひとりとのこと。
アイヌの文化については何冊か本を読んでいましたが、その民芸品の現物を見たことはあまり多くないので、この機会にもっとアイヌについて触れてみたいな、と思っています。
札幌の地下街でフクロウの神様の視線の中に立ち、ふと、新しい世界の入口が見えたような気がしました。
writer ライター
野原こみち
熱しやすく冷めやすく、興味の対象が移ろい易い性格ですが、小さな頃から本だけはずっと手放せません。古本屋は、多くのお店を巡るよりも、贔屓のお店に徹底的に通いつめる派。新刊を扱うお店も同じく。図書館は居心地重視。最近は南米の文学作品、幻想小説を偏愛気味です。