気がつけばお盆も過ぎて、あんなにしんどいと感じていた都心の蒸し暑さも、心なしか少し楽になったように思えます。振り返れば過ぎた日々は早く感じるものですね。
この夏、訪れた旅先で、見た光景。
田の中に咲く古代蓮がとても綺麗でした。
風吹けば 蓮の浮き葉に玉越えて 涼しくなりぬ ひぐらしの声
とは、平安時代後期に編纂された金葉和歌集にある、源俊頼の歌。
夏の季節の中に感じる涼の雰囲気がなんともいえない趣を感じます。
私が蓮を眺めているときにも、ちょうど涼しげな風が吹いてきました。
心地よい雰囲気の中、時間を経つのも忘れて、蓮の美しさにぼんやりと見惚れていました。
角度を変えて覗き込んで、花びらの影にかくれる花托も拝見。
蓮を「はちす」というのも、この花托が蜂の巣に似ていることから。
仏様の座る「はちすのうてな」は、いくら座っていても足が痺れないんだろうな、などと瑣末な事を考えながら帰路に着きました。
writer ライター
野原こみち
熱しやすく冷めやすく、興味の対象が移ろい易い性格ですが、小さな頃から本だけはずっと手放せません。古本屋は、多くのお店を巡るよりも、贔屓のお店に徹底的に通いつめる派。新刊を扱うお店も同じく。図書館は居心地重視。最近は南米の文学作品、幻想小説を偏愛気味です。