先ず『シェフ~三ツ星フードトラック始めました~』。
オーナーの望む創造性の乏しい料理作り拒否し、
フードトラックで商売を始めた一流料理人の主人公は、
再出発で料理や人生への熱意を取り戻そうとする。
これは料理というフィールドを使ったヒューマン・ストーリーです。
http://chef-movie.jp/
昨年観た映画の中で、これはBEST 3にランクインするお気に入りでした。
でも味覚や嗅覚を映像で表現するのは難しいんです。
なにしろ観客に香りや味を想像させる必要があるから…。
例えば昨年公開された『マダム・マロリーと魔法のスパイス』は、
この表現に挑戦した正統派料理映画です。
http://www.disney.co.jp/movie/spice.html
ミシュラン一つ星を誇る老舗フレンチ・レストランの向かいに、
インド人一家がレストランを開店します。
一家の次男は亡き母からスパイスを受け継いだ天才料理人で、
店は人気となったのですが…。
ヘレン・ミレン扮する老舗フレンチのオーナーとしては、
賑やかなインド音楽と強烈なスパイスの匂いが、
繊細さを守るフレンチにとって迷惑極まりない。
その険悪な関係がシンプルなオムレツで一変します。
あるきっかけで次男が作った秘伝のスパイス入りオムレツを食べたヘレンは、
たった一口だけで無言になり静かに涙を流すんです。
v
長年のフレンチ料理店のキャリア。
メニューを管理してきた味覚への自信。一つ星のプライド。
繊細さのかけらもないと信じていたインド料理への偏見。
それらを一瞬にして消し、涙まで流させる味。
観客は想像を絶する味を想像せざるを得ません。
名優ヘレン・ミレンの無言の涙はまさに必見です。
2006年公開の『パフューム ある人殺しの物語』は香りがテーマ。
18世紀のパリを映す冒頭は丁寧に当時の市場を見せます。
野菜や果物や鮮魚…。やがてカメラは路上のゴミまで映し出し、
そこには腐乱した肉や魚も登場します。
観客はいつの間にか刺激の強い香りや臭いを想像してしまう。
これこそが視覚が嗅覚を刺激する瞬間なんですね。
『シェフ』で我儘なオーナー役のD. ホフマンは、『パフューム』で香水の調合師として出演していた。
惜しまれつつ急逝したアラン・リックマンも、とんでもない役で出演しています。
ストーリーは予想を裏切る展開!
如何に香りは人を虜にし、狂わせるのか?
嗚呼、映画ってホントにイイもんですね!