去年今年貫く棒の如きもの 虚子

多羅尾 伴内|2019年4月10日

先日の日記、“男はつらいよ、夕焼け小焼け”につきまして...
嬉しく、また興味深く拝読しました。
あの場面は、宇野重吉演じる著名な画家が故郷に帰り、市町を挙げて賑やかな式典が行われた翌日、寅は画家に頼まれ市職員と観光へ。
画家は、ひとり岡田淑子演じる婦人のもとへ。そして、ご紹介いただいたせりふへと...
二人は別離後、初めての再会だったのでしょうか。
きっとそうだろうと、推察します。


寅と画家の出会いは、場末の居酒屋、そこで泥酔し無銭飲食の画家をとらやに連れて帰る。
前夜のことを覚えていないほど泥酔した、きっと一度だけではない...
きっと「後悔」の念が時折訪れては、筆を折るほどに、カンバスに向かえない時が有った筈。
それでも、その思いを発条にして、昇華しながら、評価の高い作品を創り上げてきたんでしょうか。
寅はどうでしょうか。数々の遍歴のなかで、後悔していることは。

八千草薫、いしだあゆみ、浅丘ルリ子、松坂慶子等々寅さえ決断すれば、所帯を持つことも可能だった筈。
わが身を知り、相手のことを第一義に思ってのことでしょうか。
湧き上がる感情はストレートに、相手が喜ぶこと、楽しいことを与えることが、
寅の喜びであり、そのことで少しでも幸せになって欲しい。
その純粋な一念があるだけなのに、それを周りが恋愛と結びつけ、
自分のことを気遣ってくれた時点で引いてしまう。
“よけいな思いをさせちまったなぁ”
寅は一度も人並みの生活を望んだことはないと思います。(あこがれはあっても)
居もなく、自ら電気や車を使うこともなく、金や物に執着しなければ、
地球に媚びることはない。そんな人の言葉は重いでしょうね。


運命を変えられるとすれば、それは生き方であって、ケータイ電話じゃないと思います。
この作品には、数奇な運命の岡田淑子を筆頭に、
やはり事故で急逝した太地貴和子(寅の弟分役の秋野大作と結婚してました)、
今は亡き桜井センリ、大滝秀治、宇野重吉の子息・寺尾聡らが彩ってます。是非ご覧になってください。
それにしても、ご家族で昭和の映画を観ていらっしゃるとは、素晴らしですね。
寅好きのお父様は教育者ですね。観ていれば、何も語ることはないのです。
私も今夜、久々に拝見します。
でも、見終わると妙に悲しく、淋しくなるんですよねぇ...

今頃は、南から桜前線とともに北上しているでしょうか。
土地土地の人々を安らかにし、その人々の悲しみを背負ってまた旅に出る...
それが寅の宿命でしょうか。

writer ライター
多羅尾 伴内
酒と旅と歌をこよなく愛し、
それらが焚き火とともにあれば、千夜一夜の話を紡ぎ出す…
そんなステキな話をお伝え出来れば…遥か九州の地より、愛を込めて