ひとり外出時はいつも音楽を持ち歩いている。
スマホは持ち合わせないので、ウォークマンだ。
ジャンルはいろいろ、でも一番付き合いが長いといえば、小椋 佳だ。
子どもから大人への階段をのぼりながら青息吐息する機微が、歌詞と共鳴していた。
母親の物語にあきて、父親の本も読み飽きて、
風の吹く夜砂丘にひとり少年は旅にでた
母親が疎ましかったり、生きる意味が分からなかったり...
あなたの後ろ姿にそっと別れを告げてみれば
裏の木戸をあけて ひとり夜にでれば あかりの消えた街角 足も重くなるけれど
その頃から旅に憧れ、十八で東京にでて バイトしては日本中を旅した
さいはての岬というだけで 夜発つ汽車で訪ねてみた
華やぐこころ遠く押しやり さすらい人の顔をつくった
ひたすらに 夜を振り続けて そのまま海に消えてしまう
数限りない雪を 君は見たことがあるのか
白くも 白くも なれなかった雪を
九州の友人たちが東京で就職 東京に住む友人の実家に入り浸り 楽しい時間が増えた
ただおまえがいい また会う約束などすることもなく
それじゃまたなと別れる時のおまえがいい
背中の夢に浮かぶ小舟に あなたが今でも手を振るようだ
真っ白な陶磁器をながめては飽きもせず かといって触れもせず
そんな風に君の周りで 今日も一日が過ぎていく
帰郷
いつかお前が下のまぶたに 涙浮かべて熱く語った あの日二人のにぎりこぶしも
想い映して汗ばんでいた こうとしか生きようのない人生がある
せめて 消えない轍を残そうか
年を重ね 否応なしに訪れる近しき人たちとの別れ
流れるなら 永い河を 君の姿 眺めながら
風をはらんだ帆にかくれて 二人だけの白い世界に 遊んでいたい
なのに何故 この心は流れに逆らう いつも何故 この命を この愛を賭けてまで
いつかまたこの命 生まれ変ろうと 君だけと思う程の この愛を賭けてまで
writer ライター
多羅尾 伴内
それらが焚き火とともにあれば、千夜一夜の話を紡ぎ出す…
そんなステキな話をお伝え出来れば…遥か九州の地より、愛を込めて