何年振りだろう。( 恐らく10年はインターバルがある )
何度目だろう。( 間違いなく3回は読んでいる )
つい最近、ひょんな出会いで無性に読みたくなった。
突然、暴力的に、一切の猶予を含まず、無性に読みたくなった。
村上春樹の長編で、俗に“羊三部作”と呼ばれていた作品の、更に続編。
出版されたのは1988年で、筆者は既に結婚をして子供が二人いて、
何の不満も不安もないサラリーマン生活を送っていた。
物語の舞台は1983年で、ちょうど東京ディズニーランドが開園する頃。
まだ音楽を聴くメディアにCDは登場しておらず、調べ物をするには人々は図書館へ行く時代。
電話はもちろん携帯ではなく、その替わりに留守番電話が便利だった…。
主人公の男性は34歳で、読んでいた当時の筆者よりもかなり年上。
ああ、自分も30歳を越えるとこんな風に考えたりできるのかと、
漠然とした気持ちを抱きながら読んだ記憶がある。
ストーリーは様々な書評などで紹介されているし、
何しろ200万部以上も売れている小説なので割愛します。
2015年に1983年を舞台にした小説を読んでいて気づく事。
今回はここに重心を置きながら読み進んでいました。
先ず何と言っても行動がアナログな点です。
もちろんメールだって存在していません。
筆者が就職をしたのは1983年でしたが、
コンピューターはPCではなくコンピューターと呼ばれていて、
全くパーソナルな存在ではありませんでした。
大学は文系だったのですが、就職をしてCOBOLとかBASICを教わりました。
会社では海外とやり取りをするためにテレックス室があり、
電話をかけるにはKDDIのオペレータを通していました。
物を届けるのは郵便か手渡し。
バイク便というビジネスはまだ一般的ではなく、
家で連絡を受けるには待機をしているか、
あるいは留守番電話のテープをセットして出掛けていました。
でもそんな時代でも産業は栄えていたし、文化も創造されていたし、
恋愛だってちゃんと成立をしていました。
寧ろデジタルでない分、時間がゆっくりと流れていたかもしれません。
※もちろん、当時はそんな事を全く思わなかったですが…。
決してあの頃に戻りたいという文脈でこの文章を書いているのではないですが、
でも確実に我々には1983年と1988年があったんです。