本書はジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクに関して書かれた様々なエッセイを、
村上春樹が翻訳したものです。
書かれた年代や書いた人や書いた目的は全くバラバラだけど、
みんなすべからくモンクを愛している人が、
モンクに纏わるエピソードやモンクへの賛辞を文章にしていて、
それを村上春樹があちこちから集めて一冊にまとめた訳です。
ちなみに村上春樹自身も以前に書いたエッセイがあり、それに加筆して再録をしています。
※この人は良くこういう加筆をするので、ファンとしてはまた読み返さないといけないんですね。
ジャズ・ミュージシャンが同じ曲を違う解釈で演奏するのに近い?
さてさてこの本の魅力の一つに、装丁があります。
カバーのイラストは和田誠さん。
実はこの本の表紙は安西水丸さんに依頼をしていたそうです。
でも安西さんは2014年3月に亡くなってしまいました。
村上春樹が安西さんに本書の話をした時、
安西さんは自分が1960年代にニューヨークで生活していた時に、
モンクの演奏を見たというお話をされたそうです。
たまたま最前列でハイライトを吸っていた安西さんに向かって、
なんとモンクがタバコを欲しがったのであげたそうです。
モンクはそれを美味しそうにその場で吸いながら演奏に戻ったとの事。
「世界中でモンクにハイライトをあげたのはオレだけだ」
安西さんは嬉しそうにお話をされました。
結局、本書の表紙はこのお話を受けて和田誠さんが描かれました。
ちなみにハイライトのパッケージは和田誠さんのデザイン。
この物語だってモンクを巡る素敵なエピソードです。
さらにちなみに、安西水丸さんが生前にモンクを描いたイラストが発見され、
本書の裏表紙にレイアウトされています。
裏表紙は書評などでもなかなか見る機会がないと思うので、
これは本を手に入れないと観られないですね。
エッセイの内容は…。
もちろん素晴らしいです。誰も文句なんて言いません。
音楽を、あるいは音楽家を文字で表現する。読んだら聴きたくなる。
不思議で素敵な体験です。