スーパーバーバーばあば 最終話

多羅尾 伴内|2018年4月13日

今年に入り、髪が鬱陶しくなったのでいつものように予約をいれた。

ここ1年くらい前から、身体と相談して一日に3人の予約制にしている、ばあば。

当日店に行ってみると、閉まっていた...嫌な予感がしたが、呑みすぎて起床できなかったかな、と帰宅。

すると、電話が鳴って、店のマスターが心筋梗塞再発で、朝4時頃救急車で運んだとのこと。

着の身着のまま、パジャマで救急車に乗ったと。その時、隊員から「ばあちゃん、息子さんは....」と何度も言われ、

息子でもなければ、ばあちゃんでもなか、とガックリきたと。

マスターは70代前半、7年前に同じ病で外出先の駐車場で倒れていたのを発見され、奇跡的に回復した。

後遺症は上下肢にマヒ。その世話をしながら、杖を突き、働き続けてきたばあば。

初めて聞いたが、今の店にきて間もなく入籍していたそうだ。

マスターは、一週間後に旅立たれた。ばあばの状況からすると、長引かず良かったと思う。

それでもばあばと母者の口癖は、病院やら行くもんじゃなか、

病気を見つけんでよかと、そげんこつするけん、病気になると。私もそう思う。

医師会に入らず、あらゆる術を駆使して治療にあたる先生が言よんしゃった、「医者ば信用したらいかんよ」...

一カ月後に再開し、石川五右衛門のようになった髪もさっぱり。

お年玉といって、3000円の散髪代を2000円に。

いつものように、母者の野菜やら漬物、ビールや酒まで持たせてくれる。

以前はカットの最中に酒まで呑ませてくれたことも...そうそうこんなことも、

福岡市天神のオフィス街で働いていた時に助手をしていた女性が最近訪ねてきて、

何十年も前のことだけど以前と変わらず、話しながらカットしていると、店の中をキレイに掃除してくれた。

でも、お客さんと話をしていたらいつの間にかいなくなっていたそうだ。

連絡先もわからず、確認のしようがないが、多分その時天国にいったんじゃろねぇ...とばあば。

可愛がっていたから、最期に合いに来たちゃろねぇ、と。

 

さてさて、ばあばといい母者といい、人生を達観して生きている二人。

さながら縄文人の魂を受け継いでいるようで...

そういえば青森県の木造駅に降臨したように存在する遮光器土偶に体型は似ている!?

先日家の電話がなり、「なおちゃん(妻の名)、かあちゃんの梅干しが届いたけん、取りきんしゃい」と...

母者は毎年自宅の梅をカメ一杯に漬け、親族に配っている。

我が家は母者のお気に入りの妻宛てに、毎年ダンボール一杯頂く...それをまた娘たちや近所にお裾分け。

それはかって、義弟のパンが紡いだように、紡ぎ紡がれ、笑顔の輪で結ばれる...

ばあばの人柄とカットの技術は、沢山の人々を幸せにする、夢はハサミとクシを持って、ボランティアで介護施設を回ること、

足のことを思うと厳しいかもしれないが、その存在そのものが生きる勇気を与え続けていると確信する。

いつまでも、愉快に呑んで、最期はハサミを持ったまま、お客待ちの間に座ったイスで安らかに眠っている姿が見えるようだ...

writer ライター
多羅尾 伴内
酒と旅と歌をこよなく愛し、
それらが焚き火とともにあれば、千夜一夜の話を紡ぎ出す…
そんなステキな話をお伝え出来れば…遥か九州の地より、愛を込めて