Quiet Rhythm of Lifeというチャンネルを立ち上げた。
このチャンネルは、もともとH.I.T. FILMSのロケで撮影したものの、
作品の流れや尺の都合で使いきれなかった自然の映像を、
静かにまとめる場所として始めるつもりだった。
朝夕の光、風に揺れる草、川の水面。
いわば“余白”として撮りためてきた映像の保管庫のような構想である。
ところが、少し方向が変わるきっかけがあった。
毎年冬になると、庭にバードフィーダー、いわゆる餌台を置いている。
スズメを中心に、小さな鳥たちが集まってくる。
編集作業の合間、機材が空いている時間を使って、そこを定点で撮影するようになった。
特別な演出はない。ただ、鳥たちがやってきて、餌をついばみ、また飛び立っていく。
それを眺めていると、不思議と気持ちが穏やかになる。
生き物がご飯を食べる姿。植物が芽を出す瞬間。
理由はうまく説明できないが、そうした光景には人を少し幸せにする力がある。
だったら、そういう「見ているだけで心地よい」映像を集めたチャンネルを作ってみよう。
QRLは、そうして輪郭を持ちはじめた。
昨今のYouTubeは、どうしても刺激が強い。
攻撃的で、ネガティブで、感情を煽るものが目につく。
私にとってYouTubeは大切な収益源でもあるが、
だからといってネガティブな情報発信に加担したいとは思わないし、
映像を誰かを殴るための道具にしたくもない。
テレビの現場に長く身を置いてきた経験も大きい。
テレビでは「音のない部分」「間」は嫌われる。常に説明が入り、
フラグを立て、回収し、考えなくても見られる構成が求められる。
それはそれで一つの完成された様式だが、QRLではその真逆をやってみたいと思った。
語らない。説明しない。答えを出さない。その代わり、受け取り方は視聴者に委ねる。
そういうドキュメンタリーへの挑戦である。
実際、チャンネル登録者は少しずつだが増えている。
そして興味深いことに、海外の視聴者が非常に多い。
テロップはほとんどなく、言語に依存しない構成だ。
それでも見られているということは、
人類共通の「気持ちよさ」に触れているのではないかと分析している。
バードフィーダーにはマイクを仕込み、スズメたちが餌を啄む音も収録している。
この音がまた、驚くほど心地よい。羽音、嘴が触れる乾いた音。
そこで、音楽ありと音楽なし、二つのバージョンを作るようにした。
作業用として、あるいは睡眠導入として、生活のどこかにそっと寄り添えたらと思っている。
正月の餅つきの映像も、方向性は同じだ。
派手な編集はしない。ただ、続いていく音と所作を記録する。
それを見て「気持ちいい」と感じてもらえたら、それでいい。
もしこの活動が10年続いたら、そこには確かに生きていた生き物たちの「生きた証」が残る。
そう考えると、非常にやりがいがある仕事だと感じている。
これからも、特別ではない、身近な自然を淡々と映していくつもりである。
Quiet Rhythm of Lifeは、そのための静かな実験場だ。
writer ライター
岡野伸行
西中国山地の麓で育ち、魚釣りが日常にある幼少期を過ごす。
大学では水産学を学び、魚が日常にある生活を送る。
大学卒業後は釣り番組の制作会社で、釣り人が日常にいる日々を過ごす。
2023年に独立し、H.I.T. FILMSの屋号で活動開始。
商業的ではなく作家性のある釣りの映像作品を制作。
釣りを人生で一周し、現在は冒険的なフライフィッシングを好み、
釣り旅のことばかりを考える毎日を送る。
H.I.T. FILMS
https:/hitifilms.jp






