元サヤ

中館慶子|2025年12月12日

深まる秋は、想いも深まるか。

年末に向けて。
不要な物を少しずつ整理し始めたところまでは、いい。

洋服の類は潔く処分を決め込めるようになり、
古い寝具やタオルも新しいものをおろし、
消費期限と思われる化粧品類もゴミ箱送りにし、
三年くらい出番のない食器にも別れを告げる。

シンプルに暮らしたいはずなのに、
なんでこう毎年毎年、処分するモノがたくさんあるんだろう。

それはさておき。
どうしても捨てられないモノがある。
私の場合、モノだけれど、思い出のひとつ。
高校を卒業した18歳の春。
有名メーカーの基礎化粧品を数本入れた、
赤い化粧BOXを母親にプレゼントされた。
最近の高校生はもはやお化粧なんて当たり前のことのようだが、
私の世代では早熟なごく一部の女子しか興味がなかったと思う。
急に大人になった気がして
嬉々として鏡付きの化粧BOXを使い始めた。
なんと約40年経った今も健在である。
昭和感丸出しの赤い化粧BOXといっても
外に持ち出すわけではないから特に恥ずかしくもなく。
だが、あちこち擦り切れてボロボロであるし、
化粧品の粉で薄汚れた内装もどう磨いても綺麗にならない。

もう、捨てよう!毎年思う。
全然高価なモノじゃないし、何なら貧乏くさい。
中に詰めている化粧品類をすべて出す。

そしてしばし考え、また赤い化粧BOXに化粧品を戻す。

母親にプレゼントされた18歳の春、私は家を出た。
代わりというわけではないが、
コレがあると母親がいつもそばで見守ってくれている気がしていた。
すでに他界している母親は
天国で「もう買い替えしなさい」と呆れているはず。

だけど、もうちょっとだけ、使わせて。

writer ライター

中館慶子

中館慶子

北海道生まれ。
仕事でもプライベートでも、どっぷり活字と深い仲。
よく食べ・よく飲み・よく眠り、
合間を縫ってはホットヨガでツリーポーズ。
走ることも大好きで、夢は、いつかはフルマラソン!
わくわくする場所は海と本屋さん。
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中館慶子
北海道生まれ。
仕事でもプライベートでも、どっぷり活字と深い仲。
よく食べ・よく飲み・よく眠り、
合間を縫ってはホットヨガでツリーポーズ。
走ることも大好きで、夢は、いつかはフルマラソン!
わくわくする場所は海と本屋さん。
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