梅の花が開いていると思っていたら、突然の春の嵐のような風雨がたびたび訪れて、花びらを散らせていきました。
もうあの日から、7年の年月が経ったとは信じられないような思いもします。
私はその地の人々に比べればまだ安全で守られた場所にいることができた身でしたが、あの日感じた気持ちはいつまでも決して忘れることはできません。
人ひとりの力はとても小さい。そのことを知らしめられた圧倒的な絶望感と、しかし、それが集まれば大きなことを変えられる筈と信じたい気持ちが、目には見えないどこかで、拮抗していたような気がします。もしかしたら、今でもそれは続いていて、私たちはその線の上をひたすら答えを探る為に歩いているようにも思えます。
憶い出すこと。
それはとても内的な事柄で、他人からは見えない自分の中の領域の出来事です。
しかし、たった一瞬でもそれをすることが、この先に自分がどう生きるべきか、何をどう選択していくべきか、大事な瞬間に必要となる指針になるのではないでしょうか。
できることなど限られている。そう諦めてしまう前に、小さなことかも知れませんが、ただあの日のことを思い返すだけでも、良いのではないか、と、そんな気がしています。
writer ライター
野原こみち
熱しやすく冷めやすく、興味の対象が移ろい易い性格ですが、小さな頃から本だけはずっと手放せません。古本屋は、多くのお店を巡るよりも、贔屓のお店に徹底的に通いつめる派。新刊を扱うお店も同じく。図書館は居心地重視。最近は南米の文学作品、幻想小説を偏愛気味です。