最高気温30度、快晴、のち曇り。
久しぶりにタイヤに空気を入れて、チャリぶらに出た。
いつ以来だろうか、天候不順の日が多い夏だったからなぁ…何処に行こうか…やっぱ筑後川かな。
であれば、自転車屋のおじさんの所へご挨拶に行こう。
途中の小郡イオンで、私自身が好きな佐賀錦と小倉の湖月堂栗饅頭を調達。
東京に住む姪っ子が、来ると買い出しに行く、
新鮮な馬刺しやホルモンを販売する小さなお店『大正屋』や、
田んぼの中の集落に囲まれるように建つ『今村教会』。
筑後川に行くルートには、いろいろと気分を高めてくれる要素があり、
野に咲くなも知らぬ花にも心が和む。
そんな気分で、おじさんの家の勝手口を叩いた。
一年半振りの訪問だ。
昼食の時間を避けて行くも、お店にはカーテンが引かれ閉まっていた。
すると、おばちゃんが出て来られて、何だかお疲れのご様子。
以前パンクでお世話になった事をお話しするとよく覚えておられて、
おじさんの事をお聞きすると…何と、四月に急逝されたと…
容態が悪化され、緊急入院、四日後にご逝去されたとのこと…
入院前日は頼まれた仕事を遅くまでして、終わらせていたそうで、
多分身体の異変を感じていた中での作業だったと思う。
毎日の晩酌が楽しみだったそうで、生涯現役で、産まれ、育った家で89歳の人生を全うされたおじさん。
仏壇にお酒がお供えしてあり、八女の繁枡…おばちゃんに聞くと、
一年半前に私がお礼に持参した、そのお酒だった。
呑まずに、ずーっとそこにお供えされていたんだ…
窓や雨戸も閉め切ったままで、一人暮らしとなって、
半年経った今も寂しさが見て取れるおばちゃんと暫く思い出話をして、お別れした。
土手に上がると、いつものように滔々と流れる筑後川があった。
橋を渡りサイクリングロードを上流に向け走るつもりでいたが、身体は下流へと舵を切っていた。
今の気分を受け取ったのか、いつの間にか、青空は消え、雲が覆っている。
ああ、ペダルが重い。
帰る場所があるから旅なんだなぁ…合掌
writer ライター

多羅尾 伴内
それらが焚き火とともにあれば、千夜一夜の話を紡ぎ出す…
そんなステキな話をお伝え出来れば…遥か九州の地より、愛を込めて