時間を超えて

中館慶子|2025年9月1日

15年前くらいだろうか。

実家の戸棚の奥にひっそりと佇んでいた
このポップアップトースターを見つけて。
わざわざ東京に連れてきた。

今で言う昭和レトロなデザイン。
機能はいたってシンプル。
忘れた頃にボンッという音を立てて
こんがり焼いた食パンを飛び上がらせる。
いちいちビックリとさせられていたものだ。

連れてきてキレイに磨いたまではよかったが、
また戸棚の奥に長い間仕舞い込んでしまっていた。
ある日、台所を整理していて
久しぶりにその顔をしげしげと眺めているうちに、
なんだか急に愛しく思えて使い始めることに。

思えば子どもの頃は6人家族で。
ひとたび食パンを食べるとなると
溝に食パンを2枚ずつ入れて
何度も焼くことを繰り返していた。
あの頃は家族みんなバターやマーガリン、
ジャムを塗って食べるくらいだったが、
父だけは残っているおかずをなんでも挟んで食べていた。
子ども心に、右にならえ、という気持ちにはなれずにいたが。
今となっては肉も魚も野菜も挟んで食べる自分がいる。
顔や性格は母似なのに、舌は父似なのだとつくづく思う。
お酒好きも父譲りだし(笑)。

そんなことを思い出しながらこのトースターを使う。
いつも食べているパンの味さえ
なんだかノスタルジック。

writer ライター

中館慶子

中館慶子

北海道生まれ。
仕事でもプライベートでも、どっぷり活字と深い仲。
よく食べ・よく飲み・よく眠り、
合間を縫ってはホットヨガでツリーポーズ。
走ることも大好きで、夢は、いつかはフルマラソン!
わくわくする場所は海と本屋さん。
writer ライター
中館慶子
北海道生まれ。
仕事でもプライベートでも、どっぷり活字と深い仲。
よく食べ・よく飲み・よく眠り、
合間を縫ってはホットヨガでツリーポーズ。
走ることも大好きで、夢は、いつかはフルマラソン!
わくわくする場所は海と本屋さん。
食卓に輝く太陽のようなお皿 Sunshine Drape サンシャインドレープ 東京∞散歩
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