先日、東京国立近代美術館で開催していた、
アジア初となる大回顧展「ヒルマ・アフ・クリント展」に行ってきました。
ずっと気になってはいたもののなかなか行けず、
6月15日に終了してしまう手前にやっと行けたという、ギリギリセーフでした(苦笑)
ヒルマ・アフ・クリント(1862-1944年)は、
カンディンスキーやモンドリアンなどの同時代アーティストよりも先に抽象絵画を描きましたが、
死後2010年代より再評価が高まり、世界的に注目されるアーティストとなりました。
彼女はスウェーデンの裕福な家庭で育ち、
王立芸術アカデミーで優秀な成績で卒業し、職業画家として活動しました。
一方でスピリチュアリズムに傾倒し、交霊術を通して抽象表現を生み出しました。
彼女の1000点を超える作品群は1980年代以降から紹介され、
2018年のグッゲンハイム美術館の回顧展は同館史上最多となる60万人超もの動員を記録したそうです。
彼女の生きた時代ではトーマス・エジソン(1847-1931)、
ニコラ・テスラ(1856-1943)、ヴィルヘルム・レントゲン(1845-1923)、
キュリー夫人(1867-1934)など19世紀後半~20世紀初頭にかけて
科学的分野の画期的発明や発見が数々ありました。
それら目に見えない科学的な世界と精神世界の双方を具現化した
「神殿のための絵画」(1906-1915年)が、
彼女をモダンアートにおける最重要人物として位置付けられる所以のようです。
期待に胸膨らませた当日、「神殿のための絵画」を中心に紹介した沢山の作品に触れた瞬間から、
あっという間に彼女の作品に夢中になりました。
中でも私の心を奪ったものは、1907年8月に人生の4つの段階について制作する掲示を受けたという
「楽園のように美しい10枚の絵画(10の最大物)」(1907年10月2日 – 12月7日制作 )でした。
幼年期(青)、青年期(オレンジ)、成人期(パステル調の紫)、老年期(ピンク)を描いた
高さ3.2m × 幅2.4mの10点の作品。
2025年を生きる私の目からも新しく感じるような色褪せることないポップで優しく楽しい絵でした。
展示室も壁の4方面がベンチになり、好きな場所から好みの絵をゆっくり鑑賞できるようになっていたこともあり、
いつまでも愛でていたい心地よい空間となっていました。
お陰で場所を変えながら、長いこと滞在しては人生について思いを巡らせていました。
しっかりとした絵画技術を持ったヒルマが精神世界を絵画で表現したという興味もありましたが、
彼女の明るくポップな作品を目にして、とても幸せな気分になったのでした。
もう亡くなって80年以上も立つというのに、全く色褪せていない彼女の絵には感動でした。
人生の段階で言えば、私は老年期でしょう。
ヒルマの絵を意識してピンク色をちょっと着てみようかなと思ったのでした(苦笑)
写真:No.1幼年期(青)、No.3青年期(オレンジ)、No.7成人期(パステル調の紫)、祭壇画
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