会社員から個人事業主になり、自宅をベースに生活をすることが多くなった。
これまでは妻に任せきりだった小学生の息子の保護者などにも参加するようになる。
他の保護者や教職員の方々と接する機会が増え、さまざまな価値観に触れるようになった。
私自身が田舎の出身で、ちょっと特殊な価値観を持っている自覚はあるが、
もうちょっと“遊び心”に社会が寛容であり、大切にしてほしいと思う。

戦後の価値観で醸成された法律や社会モラルが、
あまりにも子供たちの価値観を“平衡化”しているのではないか？と感じる。
正確には“感じていた”なのであるが、子供達と魚釣りや虫採りにいく際、何人かは保護者も一緒だ。
その時、子供はもちろんお父さんたちの方が魚釣りや虫採りに夢中になる姿をよく見かける。
戦後からの歴史を見ると、経済成長期に幼少期を過ごした我々世代が、最も“野遊び“から離れていた世代なのだ。
そして先生方もそうだ。野遊びとは遠い価値観で育ってきたわけであるから、誰のせいでもないのだ。

先日、養老孟司先生と虫採りに関わる映像製作の仕事があった。
その際に、釣りガールとして活躍する若い女性にキャスター的な立場としてお願いした。
彼女は釣りが好きで、野遊びを満喫している。しかし“虫”は得意ではなかった。
しかし“教えて”貰うと、虫を触れるようになり、それぞれの虫の個性が分かるまでになっていた。
そして彼女は養老先生に「私を含め、なぜ虫が嫌いなのでしょう？」と問うた。
養老先生から返ってきた答えに、私は頷く他なかった。（こちらの映像は後日、
Foxfire YouTubeチャンネル＜https://www.youtube.com/@foxfire_jp＞にて公開予定です）

子供達の自然に溶け込む能力は成人の比ではない。
無知ゆえの危険もあるが、そこをそっと大人が回避できるようアシストしてあげる。
子供達の自然に溶け込む能力は、生物としての好奇心が原点であり、やがて警戒心を持つようになる。
聞き齧った知識ではなく、自らの体験があれば“正しく恐れる“ことができ、見せかけだけのSDGsではなく、
環境問題を当事者として考えられる大人が増えるはずだ。

かつて“わんぱくでもいい、逞しく育ってほしい”というコピーライトのCMがあった。
私はいまでもその言葉が好きで、大人になった現在でも大切にしている。
先述した“子供達の自然に溶け込む能力”を私は“わんぱく質”と表現している。
わんぱく質が足りない社会は人間だけが主体になり、
他者との価値観の比較が全ての評価になるとても窮屈なものだ。
一方でわんぱく質が適度な社会は、他者との価値観との比較ではなく自己の追求に没頭できる。

個人的には、大人になってからの野遊びは、わんぱく質の誤用を生む可能性が高いと思っている。
小さな頃に野遊びをしなかった大学生や大人の川での泥酔事故などを見ると、
わんぱく質を誤用乱用しているように思っています。
だからこそ小さな子供たちを抱える皆さんには、
子供のわんぱく質摂取を積極的に手伝ってあげてほしい。
それはけっして難しいものではない。

虫採りならば“良い虫”“悪い虫”、魚釣りなら“良い魚”“悪い魚”を大人は決めたがる。
アリもカブトムシも、ウグイもヤマメも、子供たちにとってはどれも最高の遊び相手。
良いか悪いかは、その子が成長する過程で、その子が決めるもの。

まもなく梅雨です。
生き物たちが輝く時期です。

わんぱく質を摂りに行きませんか？