“SDGs”や”サスティナブル”など、環境の未来を憂慮した言葉が、日常にまで入り込んでいる。
ただのビジネスの材料として使われている部分もあるのだろうが、魚釣りを趣味にしていると、
自然の美しさや力強さはもちろん、その怖さや脆さなど環境の変化を身近に感じることができる。
自然の中に入り込むことが、気付くことへの近道であることは、自らの経験から疑う余地のないことだ。

地球上において自然を破壊してきたのは人間である。
しかし“自然“という概念を持っているのもまた人間である。
人間以外の動物たちは、自然と言う概念もなければ破壊されていると言う認識もない。
ヒトも自然の摂理の中で生まれた地球上の生物であり、そう考えれば現在の社会活動も“自然な事象”とも言える。

“環境保護“とは一体誰のためのものなのであろうか？
過日“ミルクの中のイワナ”と言う映画を見に行った。それはとても考えさせられる内容であった。
絶滅が危惧される生物がいたとする。それを“動物園や水族館の中で種をつなぐこと”に一体どんな意味があるのか？
それを果たして環境保護と呼ぶのだろうか。“生き様を守る”という言葉に、私は感銘を抱いた。

釣りをしない人に“キャッチ＆リリース”は虐待だ。と言われることがある。
見方によってはそう言う解釈になることは理解できる。
しかし、どんなところにいて、どんなものを食べていて、どんな性格をしているのか？
すなわち魚の“生き様”が、釣りをすればよくわかる。
自然の中では魚は“生きていてこそ価値がある”と私は思っている。
“釣り”と言う行為そのものが面白いから私は釣りをしているし、
だからこそ“この魚たちにいつまでもいてほしい”と言う気持ちが必然として現れてくる。
無論“食べるため”の釣りもするが、先の“虐待”への問いと言う観点から見れば、それもまた虐待に変わりはないと思うのだ。

考え方は多様性が然るべきだ。
魚をはじめとした天然資源は水中の“生命”を司っている物体を陸上に持ってきて、
陸上で分解すると言うのが日本における社会のサイクルだ。
本来であれば海のものは海に返すことで、生態系の循環が生まれる。
近年“海が痩せた”と言われるが、当たり前なのだ。
“環境問題”を語る以前に社会システムに矛盾があるのだ。
全ては人間のエゴの中にあやふやにされ、ヒトと言う地球上の一種の生物であることを忘れてしまっているのではないか？
人間は決して特別な生き物ではないはずだ。

環境問題は紛れもなく人間のためのものだ。
しかし大局的に考えると気が遠くなり、諦めにも似た窮地になるのは“当事者”ではないからだ。
そんな中で釣りのような趣味を持てば、当事者になれる。当事者になれば、
小さなことからでも意識を変えようと思うようになる。

食べているものの出所。出したものの行方。
それらについて考え、行動することが全ての始まりであるはずだ。
都市部の街の景色を見ると、とてつもなく自然が希薄な気がしてくる。
昔話に出てくる世界観が遥か昔のことのように思えてくる。
しかし現代の生活様式になったのは地球の歴史から見ればほんの一瞬。
大昔の話ではなく、わずか3世代だけ遡れば化学物質を摂取しない自然の恵みだけで、その体が生成されていた時代なのだ。
釣りをしているからこそ、自然の回復力の力強さも理解している。
自然の力に任せれば、環境は戻ると楽観的に思えてくる。

ミルクの中のイワナ
もう少し上映期間がございます。お近くで上映されている方はご覧になってみてください。