2023年の春に23年間勤めた会社を辞め、半年以上が過ぎた。
23年間で染みついたサラリーマンのルーティンやマインドはなかなかしつこく、
まだまだうまく回っているとは言い難い。
しかしけっしてネガティブが支配しているわけではなく、喜びや興奮を感じることもある。
主に働く場所が自宅になった。
それまでは往復で2時間を“通勤”に使っていたが“通う”と言うルーティンが外れたことは、
自分の中ではとても大きく、最初はダラダラしがちだったが徐々に朝の時間を大切にする様になってきた。
そして“午前中“と“午後“で業務をしっかりと分けることで、メリハリがつく様になった。
朝8時に子供を学校に送り出し、近所を少し散歩。陽にあたると活力が出るのだ。
そしてゆっくりとコーヒーを落とし、午前中はメールチェックや書類作成などに時間を充てることが多い。
昼食を作り、その後は編集などの集中力を求められる作業に充てることが多く、夕方には家族の夕食を作る。
自宅で仕事をすることに関して、最初はとても怠惰であったのに、いつの間にか規則性が出てきたことは、不思議なもの。
とは言え、自宅ばかりにいては精神的にもキツくなることがあるかもしれない。
何より、リアルに人と話す機会がめっきり減り、“孤独”を感じることもある。
しかし私にはロケがある。野外での撮影は、全てのエネルギーの源であると感じている。
個人でビジネスを始める様になって変わってきたことはいくつかあるが“時は金なり“と言うことへの意識が強くなった。
ちょっとした時間が”勿体無い“と思う様になり、何より無駄使いが減った。
コスト管理と言えばなんだか体よく聞こえるが、コスト管理とはただ時間管理であると実感する。
その中で難しいのが中長期の展望を描く時間の捻出。
目の前の仕事はもちろんだが、作品の企画は最も時間のかかる作業であり、
クリエイティブな作業となるため良好なメンタルの中で進めたいのであるが、
その間は無収入となることが今のところはとても不安。もう少しその間にも収入が回る様にしたいのだが、
支払サイトが長くなりがちな映像の仕事の難しさを感じている。
サラリーマンではなくなり時間の管理が自分に委ねられて半年以上、“休み”がイマイチうまく作れない。
先日した様に“時は金なり”と思っているが故、何かをすればお金になる、と思い過ぎているのだと思う。
とは言え、クリエイティブな仕事をしている以上、どこかで頭を空にすることは、トータルでプラスに働くはずだ。
土日に子供達と遊ぶものの、隙あらば作業部屋に籠り、仕事をしがち。
これからは“あえて”何もしないを作ってしまおうと思う。
近年やたらと“コスパ”と言う言葉を耳にするが、そのほとんどが“コストが低い
ことが正義!”の様な文脈で語られていることに、違和感を覚える。
パフォーマンスはどこに行ったのかと。自身でビジネスを始める様になって、
社会の構造的な部分もとても気にする様になり、これを作るにはどれくらいのコストがかかって、
どれくらいの利益があるんだろう?そんな商売の当たり前のことに、より興味が働く。
そしてそこに携わる人たちの苦労がよりわかる様にあり、なんだか人に優しくなった気もしている。
大きな会社が作るものに、低価格競争では叶うはずもなく、私が売るものはある程度“高く”なってしまうが、
その分パフォーマンスでしっかりと還元したい。
これまでは業務委託の仕事が多かったが、事業を始めて最初のオリジナル作品が完成した。
釣りの映像なのであるが、オンデマンド、サブスク前世の時代にあってDVDもプレスした。
在庫を抱えるリスクがないオンデマンドは効率が良い。
しかしこれでは“独りよがり”なビジネスになるのではないか、と言う思いがあった。
DVDと言うモノがあれば、釣具店の人たちと、釣りの楽しさを伝えるために“共に仕事をしている”感ができる。
前職時代のDVDは、私は作品を作るだけで良かった。
しかし今回はそれに加え、ジャケット・盤面のデザイン、ポップ作成、
ランディングページ作成などの作業をほぼ一人でこなした。
そして先日、納品された。
売れなかったらどうしよう・・・の不安もなくはないが、モノが目の前にあると“作った”と言う実感が強く湧く。
幸いなことに、多くのショップさんからお問合せをいただき、喜びを感じている。
撮影機器、編集機器はデジタル化が進む。しかし映像制作の実情は、驚くほど人間臭いアナログなハンドクラフト。
2024年2月16〜18日まで浅草で、つるや釣具店主催のハンドクラフト展というイベントが開催される。
私も出展させていただくが、フライフィッシングに関わるハンドクラフト品が展示即売され、作者と交流が図れる。
たくさんの“情熱”や“こだわり”が集結したこの場所に、お時間あれば訪れてみてはいかがだろう?
釣りに興味がなくとも、面白い世界が見られるはずだ。
writer ライター
岡野伸行
西中国山地の麓で育ち、魚釣りが日常にある幼少期を過ごす。
大学では水産学を学び、魚が日常にある生活を送る。
大学卒業後は釣り番組の制作会社で、釣り人が日常にいる日々を過ごす。
2023年に独立し、H.I.T. FILMSの屋号で活動開始。
商業的ではなく作家性のある釣りの映像作品を制作。
釣りを人生で一周し、現在は冒険的なフライフィッシングを好み、
釣り旅のことばかりを考える毎日を送る。
H.I.T. FILMS
https:/hitifilms.jp