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秋の月に想う

一日の仕事から解放されてエアコンのきいた建物から出てムッとした夜風に触れるとき、つい空を見上げてしまう。それは一日の疲れから解放されたいという気持ちが、せめて顔だけでも下を向くのではなく胸を張っていたいという無意識の現れかもしれない。都会でも自然を感じて心身をいやしてくれる効果が夜空にはある。
そんなときに満月が観られると、それだけで得をした気分になる。厳密にはひと月に一晩しか満月には遭遇できないが、それでも満月の前後数日であれば気分は満月。さすがに星を発見するのは難しいが、天気さえよければ月は都会でもしっかりと楽しめる。
太古から日本では月でウサギが餅をついているという言い伝えがあるが、これは月のクレーターなどが造り出す影をウサギと餅臼に見立てたから。
国によってはカニだったり女性の横顔だったりするらしい。ところが私には満月を見ると勝手にみえてしまうシルエットがある。自転車が空を飛んで月を横切るのである。
1982年に公開された映画「E.T.」。スピルバーグ監督の手によるSF映画は、制作費が約 1,000万ドルだったにもかかわらず、アメリカだけで3億ドルという当時最大の映画興行収入を記録した。この記録は 1997年に全世界では『タイタニック』、日本では『もののけ姫』に抜かれるまで、邦画と洋画の配給収入の歴代1位であった。地球外生物と地球人のコンタクトを描いたこの作品は、文字通り老若男女を魅了し、既に30年以上を経た今でもE.T.の奇妙なキャラクターを含めてその魅力は衰えていない。ちなみに監督がこの作品でもっとも好きな場面も、この満月を飛びながら横切る自転車のシーンらしい。
我々日本人にとって嬉しいエピソードがある。この自転車は日本製とのこと。映画の公開当時には“E.T.自転車”として全世界で大ヒットしたらしい。
世界的に有名な映画に日本の製品が重要な役割で貢献していた。それも最も有名なあの満月の場面で。しかし殊更にその点を強調しなかった大阪の自転車メーカー。その奥ゆかしさはとても日本的で上品である。今年は中秋の名月が27日、日曜日。夜空を見上げてE.T.が乗った自転車を探してみたい。

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