武者小路実篤記念館を訪ねて

江戸建物探訪

京王線の仙川駅とつつじヶ丘駅の中間ほどの住宅街にある「武者小路実篤記念館」。
記念館と隣接する実篤公園は、武者小路実篤が晩年を過ごした邸宅とその敷地で、湧水を水源とした大小の池、サクラやツバキなどの花木や武蔵野の野草が咲き、四季折々の風情が楽しめる場所です。

 

武者小路実篤記念館 とは

近代日本を代表する作家の一人である武者小路実篤は、その生涯を通じて、文学はもとより、美術、演劇、思想と幅広い分野で活躍しました。
明治43(1910)年に志賀直哉らとともに雑誌『白樺』を創刊し、以後60余年にわたって文学活動を続け、代表作には小説「おめでたき人」「友情」「愛と死」「真理先生」、戯曲「その妹」「ある青年の夢」など、また多くの人生論を著したことで知られ、一貫して人生の讃美、人間愛を語り続けました。
また、大正7(1918)年には「新しき村」を創設し、理想社会の実現に向けて、実践活動にも取り組みました。
また、『白樺』では美術館建設を計画し、昭和11(1936)年の欧米旅行では各地の美術館を訪ねるなど、美術にも関心が深く、多くの評論を著しています。
自らも40歳頃から絵筆をとり、人々に親しまれている独特の画風で、多くの作品を描きました。
実篤はその生涯を通じて、文学はもとより、美術、演劇、思想と幅広い分野で活動し、語り尽くせぬ業績を残しました。

実篤没後、数々の愛蔵品、遺品、邸宅(登録有形文化財に登録)などが、ご遺族より調布市に寄贈され、これらは武者小路実篤記念館、実篤公園として一般の方々に公開されるようになりました。

 

展示室について

展示室では、絵画、原稿など、実篤ゆかりのものが展示されています。こちらの記念館は、実篤の多彩な活動を紹介するため、ほぼ五週間ごとに様々なテーマで展覧会を企画されています。

ゆったりと観覧できる展示室。*展示されている作品は企画展によって変わります。

 

中庭

展示室から閲覧室に向かう間には、中庭が見えます。こちらには、かつて実際につかわれていたマンホールの蓋が展示されています。
また、「新しき村」から移植された梅の木などたくさんの植物も見え、心を和ませてくれます。

実篤の絵が入ったマンホールの蓋です。右側が実際に使われたもの。左側の色つきは試作品。

「新しき村」より移植された梅の木。大きな梅の実がとれるそうです。

休憩コーナー

休憩コーナーは中庭を見ながら、ほっと一息つけるスペースです。休憩しながら、実篤と同じ気持ちになって絵を描いてみるのもおすすめです。

素描のための静物モデルも用意されています。ぽかぽかと日向ぼっこをしながら、ちょっと絵を描いてみようかな、と思えるかもしれません。

展示コーナー・閲覧室

展示コーナーでは、実篤がつかっていた画材や、パソコンをつかってのデジタルデータなどを楽しむことができます。
また、閲覧室では、実篤の本を読んだり、実篤が好きだった画家の画集を見たり、友人の志賀直哉や岸田劉生らの本、雑誌『白樺』や日本近代文学の本や資料があり、調べものをすることもできます。
見るだけでなく、子どもから大人まで参加できる様々な講座もあり、充実した楽しい時間が過ごせます。

実篤が絵を描くときに、実際につかっていた硯。穴があいてしまうほど、絵を描くことに熱中していたのだな、と、感動すら覚えました。

実篤の生涯を映像でも見ることができます。

たくさんの資料がある閲覧室。実篤らが創刊した雑誌『白樺』(復刻版)も手にとって読むことができます。

 

ミュージアムショップ

記念館入り口にはミュージアムショップもあります。実篤の書画をもとにデザインした、さまざまなミュージアムグッズが購入できます。

展示を楽しんだあとは、ミュージアムショップも必見です。

 

実篤公園へ

記念館を楽しんだ後は、敷地内のトンネルをくぐって、隣接する実篤公園に行きましょう。
約5,000平方メートルの園内には、コブシ、サクラ、アジサイ、ツバキなどの花木、ハナショウブや武蔵野の野草が花咲き、秋には木々が鮮やかに紅葉して、四季折々の風情をかもしています。
上の池には水源となる湧水があり、下の池には鯉が泳ぎ、また、野鳥も数多くやってきます。

記念館からトンネルを抜けると、実篤公園(旧武者小路実篤邸の敷地)につながっています。

記念館側からの入り口近くの大きい池には橋がかかっていて、水面をながめたり池に生息する生き物も見ることができます。

亀が気持ちよさそうに甲羅干しをしていました。

園内にはあづまやがあり、ひと休みして自然に親しむひとときが過ごせます。

四季折々の草花が見られます。

奥には竹林も。竹林越しに望む池も風情があります

竹林と桜の木に囲まれた武者小路実篤像。

岩場の奥に珍しいヒカリモも生息しています。5〜9月が見頃。

 

旧武者小路実篤邸

実篤は、水のあるところに住みたいという子供の頃からの願いどおり、昭和30(1955)年、70歳の時に仙川の地へ居をかまえ、90歳で亡くなるまでの20年間を過ごしました。
ここでは、集まる野鳥に餌場を作り、池に鯉を飼う、安子夫人と二人の静かな生活でした。また自伝小説「一人の男」や、野菜や花を描いた絵の多くがここでかかれ、自らの完成の地ともなりました。

こちらは和室や客間と呼ばれる、最も趣きのある部屋です。

テラス側からはガラス越しに室内をみることができます。

テラスから見ることができる仕事部屋。写真左手に見える小さな机で、午前中に原稿を書き、午後からは大きな机の方で書画を制作するのが日課でした。

応接室ではたくさんの来客に応対しました。

武者小路実篤邸の玄関側です。毎週土曜日・日曜日、祝日の午前11時から午後3時の間はこちらの玄関側からも邸内に入って見学ができます(雨天中止)。詳しくはホームページにてご確認ください。

四季折々の風情が楽しめる自然豊かな公園です。

 
 

武者小路実篤記念館から上品倶楽部読者の皆さまへ

武者小路実篤記念館では、いつ訪れても新しい発見があるよう、常設展を持たずテーマ展のみで展示を構成しています。実篤は90年の生涯で精力的に活動し交友関係も広かったため、文学、演劇、美術、新しき村と展示のテーマも多彩です。
また「敷居は低く、間口は広く、奥行は深く」をモットーに、子どもから専門家まで、幅広いニーズに応える催しや取り組みがたくさんあります。
記念館に隣接し、実篤が晩年の20年間を過ごした広大な敷地は実篤公園として公開されており、無料で入園することができます。
文学なんて難しそう、実篤なんて自分には関係なさそうと思う方にも、きっと何か楽しめる点があるはず。ご来館・ご来園をお待ちしております。

 
 

編集後記

武者小路実篤の名前は、学生時代に教科書で見てから知ってはいたものの、数冊の小説を読んだ以降はどのような功績を残した人なのか、詳しく理解はしていませんでした。また、私自身、京王線沿線に長らく暮らしていたのにもかかわらず、記念館の存在を知ったのもつい最近のことでした。今回、訪れたことをきっかけに、自分とは住む世界が違う近代の文人だとばかり思っていた人が、自然を愛し、生涯地道に日々の暮らしの中で創作活動を続けていたのだと知ることができました。
訪れたことがない方は、ぜひ一度足を運んでみてください。記念館にて実篤のおおらかな作品にふれ、自然豊かな公園の中で深呼吸することで、きっと穏やかな気持ちになれると思います。

 
 


調布市武者小路実篤記念館

〒182-0003 東京都調布市若葉町1-8-30
TEL:03-3326-0648
開館時間:9:00〜17:00(閲覧室は10:00〜16:00)
 
 
 
 

入場料:大人200円 小・中学生100円 *詳しくはHPでご確認ください
休館日:月曜日(祝日の場合は直後の平日)、12月29日〜1月3日
*2025年6月10日から6月29日まで、当館は館内整備のため全館臨時休館となります。
 ただし隣接する実篤公園は、この期間も月曜日を除き開園しております。

WEBサイト: https://www.mushakoji.org/

<アクセス>
・京王線つつじヶ丘駅または仙川駅下車 徒歩10分
・小田急線成城学園前駅より「調布駅」または「つつじヶ丘駅南口」行きバス稲荷前下車 徒歩5分

 

 

CATEGORY

TAGS

食卓に輝く太陽のようなお皿 Sunshine Drape サンシャインドレープ 東京∞散歩
Life with Records chaabee イベント情報