私の本棚からvol.9

Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ/Jeff Potter著 水原 文 訳


Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ
(Make: Japan Books)
Jeff Potter 著・水原 文 訳

オライリージャパン

 

 

 我が家の本棚の中で、料理に関する本を集めたら、おそらくレシピ集のムック本なども含めると100冊は超えるかなと思います。小説など物語が書かれた本を読むのも好きなのですが、レシピ本を眺めるのも大好きで、レシピ通りに作ったり、また自己流のアレンジを加えてみたり、そして、煮込み料理やオーブン料理の合間にまた読書をしながら待つ、そんなことも日常の中で良くあります。
 ただ、いわゆる普通のレシピ本などは、おいしい料理の作り方は書いてあるけど、「なぜ、この工程が必要なのか」「この食材が手に入らないときはどういう食材で代用したら成功するのか」「この分量を間違うとどうなるのか」ということまでがこと細やかに書かれている本は稀なことで、当然ながら、読者のわたしたちは、それを間違えたり、試したり、時にはとんでもない失敗をしながら自分の経験で学ぶしかないというのが一般的です。
 今回紹介するこの本は、タイトルに書かれているように、料理を科学的な視点から捉えている本で、普通のレシピ本とは全くもって違います。実のところ、私はこの本が好きでたまらなくて、ずっとキッチンの目立つ位置に置いているのですが、ここに紹介していいものか、しばらく悩みました。その内容は、科学本といっていいのか、料理本といっていいのかわからないし、しかも「私の本棚」ではなく、「私のキッチン」に置かれている(!)本だったからです。しかしながら、私が愛してやまない本ですし、本当に面白いので、ぜひ料理好きで読書好きな方、いえ、料理があまり好きではない、という方にも読んでいただきたい。この本の冒頭の12ページでは「キッチンで恐怖を感じる人」へのメッセージまであるんです。
 私は理系人間ではないですし、学生時代も理科系授業が得意だったわけではないのですが、理系の人の視点にはとても憧れを感じます。もし、理系の人、例えばキュリー夫人とかが実験の合間に自分の家族のために料理をしたのならば、私とは全く違う視点で、料理をしていたのかも知れない。そういうことを考えながら、この本を読んでいると、なにか別の次元から自分のキッチンを見ているような気にもなります。
自分ではない誰か違う人の目線で、日常にあること(料理)を捉えるのがこんなに面白いのか、と、そんな単純な感動がありました。
 私の料理も未知の領域に突入するべく、今まで挑戦しなかった新しい調理法(この本に書かれている真空調理法)を試してみよう、そう思いつつ、また今日もページをめくるのでした。

(文・野原こみち)

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