鎌倉の夜

中館慶子|2019年7月3日

家から気軽にすぐ、という距離でもなく。
かといって、大げさな旅にならず。
鎌倉はなぜか足が向いてしまう、ほどよい気分転換の街。

年に2、3度は訪れるだろうか。

海まで歩いたり、おいしい蕎麦屋を目指したり、
人気のパン屋を覗いたり、老舗の酒屋でレアなお酒を見つけたり。
日中たっぷりと楽しみ、夕方には帰路の電車に乗る。
それが通常のパターンだったが、
今後はその時間が後ろ倒しになりそうだ。
そう、あの店を見つけてしまったから。


夕方にその前を通ったとき、開店の少し前なのだろう、
お客さんと思しき方たち数名が
今か今かと待ちわびながら並んでいた。
「焼鳥ね」くらいに思い通過したのだが、
その1時間後に再び店の前を通ったとき
なんだか無性に入ってみたくなった。

ちょうどよくカウンター席が空いていて
ビールと焼鳥数本を注文。
先客の分の焼鳥を焼く店主の姿を眺めていると実に丁寧な仕事ぶり。
お客の皆さんも、中年以降の方がほとんどで、
楽しくきれいな飲み方をされていて気持ちがいい。

ほどなくして焼鳥が目の前に。
「普通で、おいしい」
これ、私の焼鳥に対する褒め言葉なんである。
やたらと高級だったり、うんちくがあったり、奇をてらったり。
この類は、私にとっては焼鳥ではなく鳥料理。
普通で、おいしい。こうでなくちゃ。

そう、あの店を見つけてしまったから。
今後は鎌倉の夜もコースに入れよう。

writer ライター
中館慶子
北海道生まれ。
仕事でもプライベートでも、どっぷり活字と深い仲。
よく食べ・よく飲み・よく眠り、
合間を縫ってはホットヨガでツリーポーズ。
走ることも大好きで、夢は、いつかはフルマラソン!
わくわくする場所は海と本屋さん。